『教行信証』からひもとく浄土真宗の教え…藤澤信照著
浄土真宗本願寺派勧学の梯實圓氏が1981年に行った講義を記録した講義録「真宗要論」をもとに、行信教校の講師を務める著者が月刊『大乗』で、2021年4月から23年3月まで連載した「教えて! 浄土真宗」に加筆修正してまとめ、刊行した。
梯氏は親鸞聖人の宗教観、仏教観に立って「浄土真宗」の教えの位置付けを行った。テキストなどを用いずに口頭で講演していたが、同講義を聴講して書き下ろしたノートは整然と論理立った内容になっていたといい、著者は梯氏の博覧強記ぶりを回想する。
親鸞聖人の「三願転入」の回心の構造を、「三願真仮」の救済論的意義から明かした。梯氏は「三願転入と宿善論は、別の問題として考えるべき」だとして、宗祖が『教行信証』後序で「雑行を棄てて本願に帰す」と述懐したのは真仮三願に配当して述べられたものであり「三願転入」とは「第十八願の法門に帰し得たのは、第十九願・第二十願という方便の誓願のおかげであった」と考えていたという。
第6章では「現生正定聚」説の成立の背景をたどり、真実信心の内実として明かす。
巻末の第13章「浄土真宗の倫理性」では、念仏者の生き方に関わる問題として『歎異抄』第三条の文意について検討した。
定価1980円、法藏館(電話075・343・0458)刊。