神と共に歩んだ日本の歴史 神道なくして日本は語れるか…吉田成隆著
創建は推古朝にさかのぼる古社の宮司が一神道人として自らの神道史観を論じた書。神社は瀬戸内海に面した香川県三豊市に鎮座する浪打八幡宮。本書で著者は日本の歴史が神々と共にあったことを跡づけ、豊かな自然と共に日本文化が育まれてきたことを明らかにする。その道筋は単純ではなく、文明の推移や国内外の政治・社会の荒波をくぐり生き続け、いま新たに現代世界に向かって神道本来の存在意義を発揮すべき時を迎えたという。
「神が畏怖、畏敬された時代」「神が人格を得た時代」「神が国家と国民精神の中心とされた時代」「神が武家の守護神となった時代」「神が仏と一体となった時代」「神が再び国家と国民精神の中心になった時代」「神が危機に面した時代」――全11章の見出しが著者の史観を表現している。最終章は若き神道人へのメッセージとして書かれた「神が文明の転換点に立つ時代」である。
戦中生まれの著者は「軍部の台頭を背景に軍が大元帥を『現人神』と尊称」した状況にも触れ、神道を過激な国家主義イデオロギーと捉えた戦後のGHQによる占領政策に批判的な見解を述べる。神道は「宗教」の概念では定義できず「鎮守の森」の思想は地球の未来を開くと考える。その確信は、現代文明への啓発的なメッセージとなっている。
定価1650円、あさ出版パートナーズ(電話03・3983・3227)刊。