近代仏教復興の黎明と挫折 本願寺派普通学校と反省会の興亡…中西直樹著
明治時代に宗派性を打破し僧俗一体となった大衆運動の試みがあった。それが仏教革新運動だ。浄土真宗本願寺派普通学校と「反省会」に焦点を当て、本書は「明治前期には、こうした仏教革新運動のあったことがひろく認知され、これからの仏教のあり方を改めて考える契機となれば幸いである」と記す。
著者は1885年に設立された普通教校から文学寮、高輪仏教大学へと至る系譜の学校を本願寺派普通学校と定義する。普通学校は俗人にも門戸を開き、一般的学問(普通学)の教授に重点を置いた。しかし法主と末寺僧侶、守旧派と開明派の政治抗争の舞台となり混乱。1904年の高輪仏教大学の廃止により「進取の気風」の伝統はついえる。
反省会は1886年に普通教校の学生により社会矯風運動の一環として「禁酒進徳」を掲げて設立された。僧俗の違いや宗派の垣根を越え最盛期には会員が2万人を超える全国規模の団体となった。しかし本願寺派の権益優先の体質や僧侶偏重主義などが近代の仏教革新運動を阻害し、反省会は高輪仏教大学の廃校と同時に事実上の解散に追い込まれる。
本書は本願寺派普通学校と反省会の実態を把握・分析し、現在にも通じる宗派の閉鎖性の問題やそれを打破しようとする運動の難しさを鋭く指摘している。
定価5280円、三人社(電話075・762・0368)刊。