岸和田だんじり図典 祭を支える心と技…森田玲編著、平田雅路写真、だんじり彫刻研究会監修
2022年に新調した土生滝町(大阪府岸和田市)のだんじりを事例として、その建築と彫刻の美を数百点のカラー写真や詳細な用語解説と共に余すところなく紹介する。祭礼研究、民俗学、村落研究、社会学などの観点も踏まえつつ、岸和田のだんじりに関する情報が総合的にまとめられた類例のない一冊。
本書の特徴は、研究者だけでなく祭礼を運営する担い手、本体を制作する大工、豪華絢爛な飾りを彫り上げる彫刻師の視点に立っていること。だんじりの部材の名称と役割、各彫刻の題材の解説はもちろん、新調事業の意思決定から木材の調達、入魂式に至る制作過程、さらに町の歴史と町会の組織まで網羅。職人へのインタビューでは理想のだんじりの姿を追い求める大工と彫刻師の思いが語られている。祖母が岸和田市に住んでいたという籔内佐斗司氏の寄稿もある。
森田氏の研究によると、江戸時代中期の享保年間(1716~36)に豪華絢爛な川御座船を模して作られた滑稽寸劇の移動式舞台がだんじりの起源だという。岸和田城下町では1746年頃からだんじりが出た記録があり、岸和田型と呼ばれる様式の原型が生まれた。土生滝町は旧城下町からは離れているが、岸和田型のだんじりだ。氏神の意賀美神社の例大祭に合わせて曳行される。
定価3960円、だんじり彫刻研究会(電話0799・70・6592)刊。