祖父江善光寺蔵「善光寺如来御絵伝」ご絵解き…林雅彦監修、林麻子著
本書は、愛知県稲沢市にある単立・善光寺東海別院(祖父江善光寺)の「絵解き」とその復活にスポットライトを当てたほか、日本の絵解きや善光寺信仰についても取り上げている。絵解きとは説話画の内容や思想を参拝者に当意即妙に解き語り聞かせる伝統的な布教法だが、本書では絵解きの果たす対話型コミュニケーションとしての役割が再評価されている点に着目する。
1910年に林旭住住職が同寺を開いた際、浄財の勧進、信者獲得の一環として「善光寺如来絵伝」の絵解きを始め、絵解きの伝承は2代目の林旭山住職によって台本と録音テープという形でまとめられた。2002年、台本とテープを基に絵解き研究の第一人者である林雅彦・明治大名誉教授の助言を得つつ、当時副住職だった林和伸・麻子夫妻が新しい台本を完成させた。本書はカラー刷りで善光寺如来絵伝を掲載したほか、台本のせりふも記載しているため絵解きがリアリティーや臨場感を持って体験できる。
林名誉教授は、場所や視聴者の構成、口演者の力量などに応じて絵や台本にはない解説や説明が加えられる点を強調し、絵解きは「一回性の芸能・文芸」と述べる。さらに絵解きの復活を目指す寺院や団体が見られることは喜ばしい傾向であると語っている。
定価3300円、方丈堂出版(電話075・572・7508)刊。