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阪神虎舞がはたせる未発の役割 ―動態保存の可能性―(1/2ページ)

民俗学者・坐摩神社権禰宜 橋本裕之氏

2022年3月29日 09時08分
はしもと・ひろゆき氏=1961年、大阪府生まれ。早稲田大大学院文学研究科博士課程芸術学(演劇)専攻中退。博士(文学)。国立歴史民俗博物館助教授、ミシガン大客員教授、アイオワ大客員准教授、千葉大教授、盛岡大教授、追手門学院大教授などを歴任。2020年から坐摩神社権禰宜。専攻はパフォーマンス・スタディーズ(民俗学・演劇学)。東日本大震災以降は民俗芸能支援に関わる。著書に『震災と芸能―地域再生の原動力―』ほか多数。

私は関西と東北を繋ぐ阪神虎舞の世話人を務めている。寅年の2022年、出足は好調だった。昨年末に出現した新型コロナウイルスのオミクロン株が懸念されていたが、まだ蔓延する段階に至っていなかったため、正月の三が日に大阪府下のショッピングモール3カ所において阪神虎舞を披露することができた。いずれも当初の目的にこそ沿っていないが、新年を祝うパフォーマンスとして寅年にふさわしい趣向だった。そして1月16日、阪神タイガースの必勝祈願祭でも知られる廣田神社(兵庫県西宮市)の阪神・淡路大震災追悼式において奉納する機会に恵まれた。阪神虎舞を立ち上げた目的の一つが実現したという意味において、とりわけ感慨深い日だった。

だが、以降はオミクロン株の感染が急速に拡大したことを受けて、2月6日に岩手県釜石市で開催されるはずだった第12回全国虎舞フェスティバルの延期が決定した。阪神虎舞も出演を依頼されており、虎舞の本場で披露することができるというので、メンバーの士気は高まっていた。稽古にもいつも以上に力が入っていたから、延期は痛恨の出来事だったが、そもそも阪神虎舞は東日本大震災という大規模災害に関する記憶が風化することに抵抗するプロジェクトとして発足している。今日、コロナ禍という新しい大規模災害が猛威を振るう今日、阪神虎舞は次の一歩をどう踏み出したらいいのだろうか。依然として暗中模索の状態でしかないが、阪神虎舞がいわば非常時に触発されて始まったプロジェクトである以上、こうした難局においてこそ阪神虎舞の役割を再確認しておかなければならないだろう。

私は東日本大震災が発生した当時、盛岡大で教えており、岩手県文化財保護審議会委員も務めていた。震災後は日本財団の地域伝統芸能復興基金に代表される各種の助成金を仲介する中間支援を通して、被災した郷土芸能を支援する活動に奔走した。それは岩手県沿岸部の郷土芸能が人々の生きがいや喜びとして享受されていて、地域社会を再生させるさい、欠かせない要素の一つであり、そこで生きる人々にとって精神的な支柱として存在している消息に気づかされたことに由来している。だが、10年以上が経過した現在、私が暮らしている関西は遠隔地ということもあり、東日本大震災を思い出す機会も少なくなってきている。そしてコロナ禍。記憶の風化は深刻な問題である。

記憶の風化に抵抗するといっても、遠隔地において何ができるだろうか。私はインドネシアのジャワ島地震によって被災したガムランを支援してきた民族音楽学者の中川眞さんとも相談して、岩手県沿岸部の郷土芸能を象徴する虎舞を関西に移植することを考えた。その理由は明白である。関西人は何といっても虎が大好きだから。実際は阪神・淡路大震災によって甚大な被害を受けた神戸市の新長田に拠点を置くNPO法人ダンスボックスを介して、そこに出入りするコンテンポラリーダンサーたちが集結した。そして18年、岩手県大槌町に拠点を置きながらも圧倒的なパフォーマンスによって広く知られる大槌城山虎舞に学び、阪神虎舞は新長田で結成された。女性の舞手を擁する唯一の虎舞団体であり、虎舞の基本的な演目のみならず、新しい演目にも挑戦している。

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