PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
2025宗教文化講座
PR
2025宗教文化講座

仏教と人工知能の倫理(1/2ページ)

花園大教授 師茂樹氏

2021年11月11日 09時16分
もろ・しげき氏=1972年生まれ。早稲田大第一文学部卒業、東洋大大学院文学研究科博士後期課程単位取得退学、博士(文化交渉学・関西大)。現在、花園大教授。専門は東アジア仏教思想・人文情報学。最近は、人工知能やロボットの問題にも取り組む。2019年、亀山隆彦らと上七軒文庫を設立。著書に『最澄と徳一 仏教史上最大の対決』(岩波新書)、『論理と歴史―東アジア仏教論理学の形成と展開』(ナカニシヤ出版)、『「大乗五蘊論」を読む』(春秋社)など。

スマートフォンを常時携帯し、キャッシュレス決済が当たり前となってきた昨今、その利便性と引き換えに、個人の行動記録が個人情報とともに収集され、分析され、売買される「監視資本主義」も拡大しつつある。この概念を提案したショシャナ・ズボフは、「監視資本主義」を「人間の経験を、密かな抽出・予測・販売からなる商業的慣行のための無料の原材料として要求する、新たな経済秩序」と定義する(野中香方子訳『監視資本主義 人類の未来を賭けた闘い』東洋経済新報社)。

中国では、こういった人々の「経験」を政府が収集し、全国民をランク付けするシステムも構築されつつあるという。ランク付けが社会サービスと連動しているため、人々は自身のランクを上げるために政府にとって望ましい行動を自発的に取ろうとする、という新たな統治のシステムである。

SNSにおいては、以前から、ユーザーがどのような記事をクリックしたかを記録し、それにもとづいてユーザー個々の好みを予測、それに応じたコンテンツを優先して表示することが行われている。これによって、自分の周りには自分と同じ考え、同じ好みの人しかいないように錯覚してしまう「友好的世界症候群」にとらわれ(イーライ・パリサー『フィルターバブル インターネットが隠していること』早川書房)、また同じような意見を繰り返し閲覧し続けることで、自身の信念を強化してしまう「エコーチェンバー現象」に陥っているユーザーも増えているという。

自身の考えの正しさに疑いを持たず、違う考えを持つ者に対して「ネトウヨ」「パヨク」と罵りながら、人々が分断を深めていくSNSは、まさにこういった現象の表れである。このような仕組みを用いれば、管理者側が、ユーザーの目にする情報を意図的に操作することによって、特定の主義主張などへ誘導することも可能である。

自己変革が主軸の「ネットカルマ」論

宗教が社会的存在であるならば、「こういった社会において、仏教はどのような役割を果たすことができるだろうか」と問いを立てることも求められてくるのではないかと思う。現在、いくつかの提案がなされているが、佐々木閑の「ネットカルマ」をめぐる議論はその一例であろう。

佐々木は、スマートフォンやIOT(モノのインターネット)、顔認識システムなどによって人々の行動が記録され、インターネット上に蓄積され、やがてそれが自分に何らかの形で返ってくる、という「極度の監視社会」のなかに、仏教のカルマのシステムとの共通性を見出して、それを「ネットカルマ」とよぶ。そして、それに「対抗」するために「ネットの価値観から離れ」「自己鍛錬に人生の生きがいを見出す」方法を説く(『ネットカルマ 邪悪なバーチャル世界からの脱出』角川新書)。

このような佐々木の議論は、仏教の本質に基づいた傾聴すべきものであると思う。ただ、本書の後半に「自分を救えるのは自分自身である」という『ダンマパダ』の言葉が引かれるように、その方法はあくまで自分自身を変えることが主となっており、「極度の監視社会」の方を変えようというものではない。そこにある種の物足りなさを感じてしまうのは、筆者だけであろうか。

堕胎と間引き戒めた浄土真宗 石瀬寛和氏3月21日

近世期の浄土真宗は他宗派に比べ堕胎と間引き(嬰児殺)を強く戒めた、と言われてきた。これは浄土真宗本願寺派、真宗大谷派などを問わず浄土真宗一般の傾向と言われ、近代以降の社会…

私たちが直面する世界とその課題 與那覇潤氏2月21日

コロナ禍以降の世界の構図 今日の世界のおかしさを喩えた話として、こんな場面を想像してほしい。私自身が実際に、かつて体験した挿話にも基づいている。 あなたが精神的な不調を抱…

本覚思想と法然および浄土宗教団 安達俊英氏2月17日

一、本覚思想とその評価 本覚思想とは「人は本から覚っている」という思想である。狭義的には「天台本覚法門」のことを指すが、広義にはそれと同様の内容・傾向を有する思想全般も「…

地裁で解散命令 旧統一教会問題深層解明を(3月28日付)

社説4月2日

災害地支援の温度差 「身になる」ことの重要性(3月26日付)

社説3月28日

米作りの祭事 日本の原点を考える(3月21日付)

社説3月26日
このエントリーをはてなブックマークに追加