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幻の山林寺院「檜尾古寺跡」の発見(2/2ページ)

京都女子大非常勤講師 梶川敏夫氏

2019年4月26日

如意寺の大慈院跡と推定した遺構は、礎石が露出するほど浅く、イノシシなどの動物が餌を求めて地面を掘り返したことにより、浅く埋まっていた遺物が地表に表れるなどしていたことから、その保存のための緊急調査が必要と判断し、考古学研究会による遺跡確認調査を行うことにしました。

調査は、17~18年にかけて遺跡全体の地形測量及び建物跡の礎石の位置確認と、地表の遺物採集を主に行い、その結果、2棟の礎石建ち建物跡を発見し、遺跡周辺から発見した瓦や土器などの遺物はコンテナに3箱分ほどとなり、点数は小片を含めて500点以上にもなりました。

遺跡の規模は東西約140メートル、南北約130メートルで、大きく5箇所の平坦地やそれらを繋ぐ通路跡を確認し、そのうち2箇所から建物跡を発見、他の平坦地にも堂宇が存在していた可能性があります。

発見した東側建物跡は、東西桁行5間(14・4メートル)、南北梁間3間(8・1メートル)で、全体の礎石24個のうち15個を確認しました。遺跡の中央付近の一段高い尾根部で見つかった建物跡は、礎石11個を確認、東西桁行5間(15メートル)と判明しましたが、南北梁間は2間(4・8メートル)しか確認できませんでした。

この両建物は、付近の発見遺物から創建が平安時代前期の9世紀前半に遡る可能性があり、廃絶時期は、焼けた瓦などの遺物の存在や10世紀中頃の土師器片が見つかっているため、その頃に火災に遭って廃絶し、埋没したまま人知れず今日まで山中に残ったものと思われます。

この遺跡は境内古図に描かれた大慈院と比較して、遺跡の規模が大きく地形や発見建物跡とは一致しません。また、表採遺物は大慈院の最盛期である鎌倉から南北朝期のものは無く、大半が9世紀代の土器や瓦で、中には9世紀前半代の遺物も含まれます。発見遺物の中で特に目を引く塑像片は、京都市内ではこれまで4例しか見つかっておらず、分析の結果、漆に金箔を貼った漆箔の塑像と判明しました。塑像は奈良時代の天平期には盛んに造られますが、平安時代に入っては造られなくなるといわれ、山林寺院跡では初めての発見例となりました。

資財帳の斉衡3年の記述から、上寺の北は「檜尾古寺所」で、古寺との記述から創建は少なくとも9世紀前半代に遡り得ることが分かり、しかもこの遺跡は安祥寺上寺の北方に位置します。

この両寺の位置関係や表採遺物の時代も資財帳の記述と一致することから、今回、幻の檜尾古寺跡を発見したものと判断しました。ただし、この遺跡は元々如意寺の子院である大慈院跡と推定していた場所であり、今後は不明の大慈院跡の発見がまた新たな課題になる結果となりました。

平安時代の9世紀代は、最澄や空海が804年に大陸の唐へ渡り、新しい仏教である密教をわが国に伝え、また両高僧を含めて、先述の入唐八家と呼ばれる僧たちが大陸へ渡り、密教を伝授されて多くの仏具や経典を持ち帰り、全国に広まっていった時代です。

遺跡は、その初期の段階に平安京近傍に建立された密教系山林寺院とみられ、標高400メートルほどの南向きの尾根を削り、谷を埋めて造成された大きな境内地を有し、今回発見された2棟の建物以外にも堂宇の存在が予想されます。また、発見された高級な緑釉陶器などの遺物から、創建に関わる開基の僧や、経済的な後ろ盾である檀越は、かなりの人物が関わったものと推測されます。

今回は発掘調査でなく、京都女子大学考古学研究会のサークル活動による遺跡確認調査ですが、環境劣悪な山岳域での調査活動を、参加した女子大生たちの努力で克服し、協力して調査を進めた結果、その実態の一部が解き明かされ、唯一の史料である『安祥寺資財帳』に記載された檜尾古寺跡を突き止めた成果は大変大きいといえます。

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