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作られていく発達障害(2/2ページ)

精神病理学者 野田正彰氏

2018年5月18日

しかし、この調査の社会的詐欺が成功し、世に発達障害6・5%は流布定着していった。この詐欺口上の恐ろしいのは、小・中学校の教師たちが、40人クラスの生徒のうち6・5%、つまり2人から3人は発達障害かもしれない、支援学級を勧めた方がよいと考えるようになったことだ。一歩一歩、教育の本質は削り取られ、子どもとの付き合いはさらに少なくなり、教科書を教えるだけの教え方の専門化が進んでいる。学校や環境が分析されず、個々の子どもが疾病化されると、社会は無反省になってしまう。

こうして世論操作を行った上、満を持して2004年、「発達障害者支援法」が議員提案で可決された。公明党の福島豊・元衆議院議員(内科医)の活躍により、「この法律において『発達障害』とは、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するもの」(第2条)と定義した。

発達障害は脳機能障害であるという、医学上の根拠はない。それを法律でもって「脳機能の障害」と政治的に断定した。そもそも「脳機能の障害」とは何か。人間の精神的活動はすべて脳機能の働きによるものである。具体的にどの症状がどの部位の機能に関係しているか、病的であるか証明されない限り、脳機能の障害といっても意味をなさない。ひとえに脳の器質的、遺伝的異常があるに違いないと暗示誘導している。

「もしかして」拡大

法律施行後、もしかして発達障害かもしれないという、もしかして催眠は拡大の一途をたどってきた。例えば精力的に発達障害を喧伝する読売新聞は、小学1年生のうち発達障害とみられる子どもは横浜市10・9%、広島市11・6%、松本市12%(2013年のアンケートから)と報道(17年11月8日)している。アンケート手法の詐術は、ついに10%を超えるに至った。10人に1人が脳機能障害の社会が存続するのか、考えてみてほしい。

ここまで発達障害なるものを流行させておいて、どうするのか。背後には巨大製薬会社が児童精神科医や小児科医を誘導し、「もしかして」として受診した人や親を、アンケートと類似のチェックリストに基づき、「そうです、発達障害です」と言う。親は「やはりそうか」と安心する。何に安心したのか、分かっていないが。

すでに医師は製薬会社が乱造した学会や広告で、病名とセットになった薬品名を焼き付けられており、向精神薬の投与に一気に進んでいく。

病気作りと薬漬け

適切な指導、支援といわれているが、ほとんど行われていない。ただ薬の処方箋が渡されるだけである。いかに薬の売り上げが急増しているか。ADHDの治療薬として認可されている薬は2剤、ストラテラ(イーライリリー社)とコンサータ(ヤンセンファーマ社)である(17年、インチュニブが新たに認可された)。共に精神刺激剤といわれる、極めて副作用の強い薬である。そのストラテラの売り上げは09年に5億4千万円だったのが、わずか7年後の16年には229億円と、40倍になっている。

今や「大人の発達障害」なるでたらめ用語まで作られ、病気作りと薬漬けは加速している。このままでは疳の虫封じの方が、まだ人が死ぬことはなかった、と振り返る時が来る。その前に「発達障害詐欺」の近年の動きを知り、人の生き方を疾病化する悪に気付いてほしい。

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