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憲法と皇室典範(2/2ページ)

創価大法科大学院教授 藤田尚則氏

2018年4月27日

憲法学上の通説は、天皇の行為を内閣の助言と承認に基づく国事行為(憲法3条、6条、7条)(天皇無答責)と非国事行為に分類する。そして後者を「私的行為」と「公的行為」に二分し、公的行為には内閣の統制が及ぶと解している。生前退位に対する政治的介入の排除と天皇の責任との関連で、天皇の退位申し出を憲法上いかに位置づけるかが論議される必要があろう。

4.皇位継承の儀式

即位に伴う儀式は、明治憲法の下にあっては明治42年2月11日に「皇室令」第1号として制定された「登極令」及びその附式(昭和22年5月2日廃止)に、①「賢所ノ儀」、②「皇霊殿神殿ニ奉告ノ儀」、③「剣璽渡御ノ儀」、④「践祚後朝見ノ儀」について詳細な規定が置かれ、神権天皇制と相まって極めて宗教色の強い内容で構成されていた。

平成元年1月9日の今上天皇の即位の礼に際しては、政府は上記③と④に当たる「剣璽等承継の儀」と「即位後朝見の儀」を国の儀式として行うことを閣議で決定し、剣璽等承継の儀では「三種神器」のうちの剣と璽(曲玉)、御璽(天皇の印)及び国璽(日本国の印)の継承が行われ、平成2年11月12日に国事行為として「即位の礼」(皇室典範24条)が、11月22日、23日に皇室行事として「大嘗祭」が行われた。

皇位継承に伴う大嘗祭について政府は、平成元年12月21日「宗教上の儀式としての性格を有すると見られることは否定することができず、また、その態様においても、国がその内容に立ち入ることにはなじまない性格の儀式であるから」国事行為として行うことは困難であるが、皇位が世襲であることに伴う極めて重要な伝統的皇位継承儀式であり「大嘗祭は、公的性格があり、大嘗祭の費用を宮廷費から支出することが相当である」とし、公金たる宮廷費(「皇室経済法」5条)をもって充てることを決定した(内閣総理大臣官房『平成即位の礼記録』(平成3年10月)17頁)。

政府は、今上天皇の退位に伴う儀式(国事行為)として平成31年4月30日に「退位の礼」を、5月1日に「剣璽等承継の儀」と「即位後朝見の儀」を、10月22日に「即位礼正殿の儀」と「祝賀御列の儀」を行うとの概要を固めた(平成30年3月30日付朝日新聞夕刊)。大嘗祭については、上記平成元年の政府見解に従うという(平成30年2月21日付朝日新聞朝刊)。

憲法20条3項は「国及びその機関は……いかなる宗教的活動もしてはならない」と規定し、89条は宗教的組織への公金支出の禁止を定め、国家と宗教は厳格に分離されなければならないとしている(「政教分離の原則」)。新天皇に継承される三種神器のうちの剣と璽について政府は、皇室経済法7条にいう「皇位とともに伝わるべき由緒ある物」としている(第31回国会衆議院内閣委員会議録第14号8頁)。剣は熱田神宮で参拝の対象とされているところ、宗教性が全くないのか、憲法上疑問が残る。

大嘗祭について最高裁判所は、平成14年7月11日判決の「鹿児島大嘗祭違憲訴訟」において、「大嘗祭は、天皇が皇祖及び天神地祇に対して安寧と五穀豊穣等を感謝するとともに国家や国民のために安寧と五穀豊穣等を祈念する儀式であり、神道施設が設置された大嘗宮において、神道の儀式にのっとり行われたというのであるから、鹿児島県知事である被上告人がこれに参列し拝礼した行為は、宗教とかかわり合いを持つものである」とし、大嘗祭の宗教性を全く否定しているわけではない。

国家と宗教は厳格に分離されなければならないとする立場に立てば、大嘗祭は皇室経済法4条にいう「内廷費」(御手元金)をもって行うべきであろう。

5.女性天皇

皇室典範1条は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」とし、女帝制度を認めていない(第31回国会衆議院内閣委員会議録第5号8頁参照)。しかし憲法論上、女性の即位を認めることは皇室典範の改正によって行うことができるのであり、立法政策の問題である。将来的に国民の間に女性天皇を認める意見が強まってくることも、また予想されるところである。

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