PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
新規購読紹介キャンペーン
PR
第21回涙骨賞募集 墨跡つき仏像カレンダー2025

宗門系学校誕生の近代史 ― 近代日本の宗教≪13≫(2/2ページ)

田園調布学園大助教 江島尚俊氏

2017年8月23日

ただし、内的かつ外的な要因を背景に僧侶養成機関は、公的認可を求めて徐々に学校制度に接近していく。内的要因とは、仏教者側の「普通学」への関心増である。

教団ごとにスピードの違いはあるものの、宗門系学校では「普通学」が導入されていった。「普通学」とは世間一般の学校で教授されていた科目を指し、今でいうと国語や数学、地理といった科目群に値する。ただし、「普通学」導入は伝統教学や宗学の科目削減を必然としたため、保守層からの批判が根強かった。

しかし、明治28年の内務省訓令第九号によって「普通学」導入の流れは決定づけられる。神官僧侶たる者は尋常中学校以上の学識を具備するよう指示されたのであった。この訓令は外的要因として機能し、各宗門系学校ではカリキュラム改革が実施されていくこととなる。

無論、この段階でも宗門系学校を所管するのは正式には内務省であり、学校制度上では各種学校扱いであった。しかし、文部省が定めるカリキュラムを徐々に取り入れ、かつ施設や運営体制も充実させてゆき、宗門系学校はいわゆる学校としての体裁を徐々に整えていった。

一方、徴兵令との関わりも外的要因の一つとして見逃してはならない。明治22年に徴兵令が改正され、中学校程度以上の私立学校に在学する学生にも徴兵猶予の特典が認められた。それ以前は官立学校のみに特典が認められていたことから、私立学校は常に学生流出に伴う経営難に苦慮していた。

待望していた改正を機に、私立学校は徴兵猶予認定を得るべく、自校のカリキュラムや組織体制を官立のそれに寄せてゆき続々と認定申請を行った。無論、宗門系学校でも他の私立学校と同様の動きをみせることとなった。

四 宗門系学校の誕生

そして、いよいよⒸへの移行である。Ⓒとは文部省が所管する領域であり、宗門系学校はこの時期以降に文部省によって正式に学校として認可されていく。その際の法的根拠となったのが、明治32年8月に勅令公布された私立学校令である。

当時の教育行政においては、確かに私立学校という教育機関は不可欠と目されていた。しかし一方で、増加し続ける私立学校の管理方法が課題となっていた。そこで私立学校全体を包括的に所管していくための法令が明治20年代半ばより模索され、その結果、私立学校令が公布される。

なお、同令とともに発せられたのが、全ての学校において宗教教育を禁止した文部省訓令第十二号である。この訓令は、本来的にはキリスト教系学校対策を企図したものであったが、それのみを狙い撃ちすることは外交上不可能であったため、全学校を対象に宗教教育を禁止したのであった。

無論、これは文部省認可の学校において宗教教育を禁止したのであって、認可不要の学校においては宗教教育を実施してもよかった。ただし、その場合は私立学校令に認可されず各種学校扱いを受けることとなる。その学校を卒業しても学歴は得られず、また、高度な教育を教授していたとしても徴兵猶予特典も得られない。

そこで実際には、多くの私立学校が同令認可および徴兵猶予特典の獲得を目的に、同令に定められた内容に基づき組織を整備し、カリキュラムを改変していった。宗門系学校も同様であった。

私立学校令認可を受けた宗門系学校が全体としてどの程度存在したのか、現段階では分かっていない。ただし、中学校程度以上の宗門系学校であれば、明治年間において延べ41校の学校が私立学校認可を受け徴兵猶予特典を得たことが判明している(この数は統廃合や再認可等の重複を含む)。

大正期になると、それらの中から宗門系大学への昇格を遂げていく学校が出てくることとなるのであるが、残念ながらそれは字数の制限があり論じることはできない。私立学校→専門学校→大学という階梯を宗門系学校は如何にして昇っていったのか。もし機会があれば、それの実態についても論じてみたい。

神道の社会的側面と他界的側面 津城匡徹(寛文)氏12月3日

1、国家レベルの公共宗教 近代日本の政教関係について、私はしばらく前から、「社会的神道」と「他界的神道」という枠組みで考えている。帝国憲法下の神道の一部を、「国家神道」と…

本願寺と能楽文化 ― 式能の伝統 山口昭彦氏11月28日

芸術大学移転記念で祝賀能上演 昨年10月、芸術系の大学として日本最古の歴史を持つ京都市立芸術大(赤松玉女学長)が西京区から京都駅東側の崇仁地区に移転した。その移転を祝う記…

『顕正流義鈔』にみえる真慧上人の念仏思想 島義恵氏11月20日

真慧上人について 高田派第十世である真慧上人(1434~1512)は、第九世定顕上人の子息として誕生した。その行実は『代々上人聞書』『高田ノ上人代々ノ聞書』や、五天良空が…

COP29が示す分断 気候正義の担い手の宗教(11月29日付)

社説12月4日

ガザ停戦決議 問われる米国の姿勢(11月27日付)

社説11月29日

SNSと選挙 時代の大きな変化を象徴(11月22日付)

社説11月27日
このエントリーをはてなブックマークに追加