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ヨーガの効能 ― 仏教も解脱の手段として重視(1/2ページ)

大谷大教授 山本和彦氏

2016年10月21日
やまもと・かずひこ氏=1960年、京都市生まれ。大谷大文学部卒、インド・プーナ大サンスクリット高等研究所博士課程修了。プーナ大Ph.D.、大谷大博士(文学)。大谷大専任講師、ハーバード大客員研究員などを経て、2012年から現職。専門はインド哲学、仏教学。主な著書に『インド新論理学の解脱論』(法藏館)など。
《はじめに》

毎年6月21日を「国際ヨーガの日」とすることが、2014年の国連総会で決まった。瞑想としてのヨーガの起源は紀元前2800年頃のインダス文明まで遡る。インダスの遺跡からヨーガの姿勢をしたシヴァ神らしき印章が出土しており、ニューデリーの国立博物館で展示されている。文献としては紀元前600年頃から紀元前300年頃までに成立した古いウパニシャッド文献、特に『タイッティリーヤ・ウパニシャッド』や『カタ・ウパニシャッド』のなかでヨーガの行法について述べられている。最初期から仏教やジャイナ教もヨーガを解脱の手段として重視していた。4世紀頃までに成立した『ヨーガ・スートラ』においてヨーガの実践方法がまとめられ、ヒンドゥー教の一派としてヨーガ学派が成立する。ヨーガの目的は解脱であるが、そこに至るまでに超能力(シッディ)の発現や健康になるなど様々な効能があると書かれている。

ヨーガの手段は実修(アビヤーサ)と離欲(ヴァイラーグヤ)である。心作用の止滅に対する努力(ヤトナ)が実修と言われている。長期間にわたり絶え間なく、苦行や梵行などの準備をしっかりとして、ヨーガを実修すれば解脱する。ヨーガには真言(マントラ)・ヨーガ、没入(ラヤ)・ヨーガ、行事(クリヤー)・ヨーガや『バガヴァッド・ギーター』(神の歌)で説かれている行為(カルマ)・ヨーガ、知識(ジュニャーナ)・ヨーガ、信愛(バクティ)・ヨーガなど様々な種類があるが、実修を中心とするものはラージャ・ヨーガとハタ・ヨーガの2種類である。ラージャ・ヨーガは、意識を自分の内面に向けるよう制御し、最終的には心作用を止滅させることにより解脱を目的とする伝統的な王道(ラージャ)のヨーガであり、根本聖典は『ヨーガ・スートラ』である。ハタ・ヨーガは、ラージャ・ヨーガの準備段階であり、身体的・生理的な強制力(ハタ)を伴うヨーガであり、健康維持や病気の治癒に効果がある。ハタ・ヨーガのテキストとしては13世紀頃の『ゴーラクシャ・シャタカ』、16、17世紀頃の『ハタヨーガ・プラディーピカー』、『ゲーランダ・サンヒター』や『シヴァ・サンヒター』などがある。

《超能力》

『ヨーガ・スートラ』で述べられる超能力は約30種類あるが、半数以上は知る能力である。過去と未来、すべての生物の叫び声の意味、前生、他人の心、自分の死期、宇宙、星の配置、星の運行、体内の組織、神霊、すべて、自分の心、精神原理(真我、プルシャ)などを知る能力や透明人間になる、飢えと渇きを消す、身体から火を出す、空中歩行などの能力である。これらは禁戒(ヤマ)、勧戒(ニヤマ)、坐法(アーサナ)、調気法(プラーナーヤマ)、制感(プラティヤーハーラ)、凝念(ダーラナー)、静慮(ドゥヤーナ)、三昧(サマーディ)というヨーガ8階梯のうち最後の3階梯の実修によって生じる。この最後の3階梯はヨーガ行法の内的支分(アンタル・アンガ)であり、連続的に行われるので、ひとつのまとまりとして総制(サンヤマ)と呼ばれている。凝念は意識を眉間(アージュニャー・チャクラ)などの対象に集中させることである。

静慮は禅定とも言われ、凝念によって絞り込まれた一点の対象のなかで意識を拡大させることである。三昧は見る主体と見られる対象との区別がなくなり、あたかも同一であるかのようになる体験である。ハタ・ヨーガのテキストでは、印相(ムドラー)という行法を手段として、クンダリニー(蛇の姿の女神)を覚醒させることによって神的能力(シャクティ)を発現させ、超能力が得られ、さらに、ヨーガの実修によって透視力の獲得、火に焼かれない、水に濡れない、蛇に噛まれない、瞬間移動、予言などの超能力が発現すると書かれている。

《健康》

ヨーガの実修によって病気が治ったり、健康になると『ハタヨーガ・プラディーピカー』では説かれているが、消化力の増大が多い。たとえば、両手を地面につけ、臍の両横に両腕の肘をつけ、身体を浮かして真っ直ぐに保持するという孔雀(マユーラ)体位(アーサナ)により、脾臓肥大が治癒され、大食したものが消化され、猛毒が中和される。ゆっくりと息を吸い込み、長く止息(クンバカ)し、ゆっくりと息を吐き出すという調気法(プラーナーヤマ)によって、身体つきが細くなり、血色がよくなる。このクンバカは毎回80回を1日4回行わねばならない。

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