都市開教と過疎地開教の展望 ― 顧客中心の伝道へ移行必要(2/2ページ)
浄土真宗本願寺派西方寺住職・本願寺派東京仏教学院講師 西原祐治氏
浄土真宗の学問の基本は真宗学(宗学)であり、宗学をベースとした現代教学の研鑚は重要です。そうした学びと共に、“伝える”“伝わる”“共感する”といった生活のレベルで、どう現代の病理とリンクし、み教えを表現できるのか、生命倫理など現代を取り巻く諸問題に対応した教学が望まれます。
2025年には、すべての都道府県で一人暮らしが最も多い世帯構成になり、その5年後、一人暮らし世帯の全世帯に占める割合が37・4%に拡大し、東京都の45・5%が一人暮らし世帯(単独世帯)になるといわれています。
世帯数で言えば、1953年の総世帯数が1718万世帯、一昨年(2014年)が5043万世帯と3倍近くに増加しています。核家族化・単身世帯を結ぶもの、つながりは、職場や地域などが担っていましたが、生活スタイルの多様化により、従来の組織は、接着剤的な機能が失われつつあります。今こそ「浄土真宗」という括りの中で、安心につながる教えも含め、人間関係や種々のサービスを提供することが求められています。個人を単位として信頼をつくっていくネットワークの構築です。過疎化地域にあっては、地域の生活を支える拠点としての寺院づくりです。
先の寺院の収入源の多様化同様、伝道者も寺院に固定化する必要もありません。理想的には、本願寺派が経営する公益施設に伝道者を雇用して、過疎地域等への伝道に従事させることがベストです。学校や一般企業に籍を置いて伝道を営むことも考えられます。従来、住職以外の職業に就く兼業寺院は、消極的寺院形態とする見方でしたが、学校や他の組織の中で真宗的考えをどう敷衍するかという立場から見れば、兼業寺院は最先端の形態だともいえます。伝道者を僧侶に限定し、伝道の場所を寺院に限定する、その考えそのものが伝道の限界をつくっています。
本願寺派がもつ資源の一つは、1万を超える寺院です。そのネットワークをどう活用するのか。本願寺派に所属する門信徒が加盟するウェブ上における仮想商店や、ネットワークを生かした門信徒の移動に対する情報交換、法務の代行など、可能性は大です。
現在の寺院は地域門信徒のための施設に終始しています。日本全体の真宗門信徒のための寺という位置づけがありません。その寺の歴史や独自の活動などを紹介する情報の発信があれば、プライベートでの旅行でお寺を訪問することもできます。そのお寺を通して、その地域の文化に触れる。
これは各地の別院も同じです。その地域のための情報発信に終始していますが、別院へ行けば、その地域の歴史や地域独自の情報、特色のある寺院の紹介が手に入る等の、他地域のための情報発信が求められます。首都圏もふくめ、地方の一寺院を、全国の寺院へ解放していくという文化の醸成と内容の充実が求められます。
浄土真宗本願寺派の僧侶の特徴の一つに、在家衆徒の多さが挙げられます。それは本来、在家仏教であることと、通信教育の充実によって形成されました。
都市部であれば、在家衆徒の人たちが、自宅や公共施設などで、家庭(地域)法座を展開し、宗派(教務所)は、講師派遣等によりバックアップしていく。
過疎地域の寺院へは、年金で生活を確保できる在家衆徒を再教育して、10~20年の限定で、代務住職として各地に派遣することです。まずはそのモデル地区を設定して実働することです。
寺院収入の減少に伴い、宗派財源の減収は明らかです。寺院ではなく宗派への帰属意識をベースとした本願寺、あるいは宗派独自の会員システムの構築、あるいは宗派自体が収益事業や株式会社等の外郭組織による収入増をはからなければなりません。半永続的に関わることのできる門信徒を核とした頭脳集団の結成が必要です。僧侶中心の運営形態からの脱皮が求められます。