宗教法人と「マイナンバー」 ― プライバシーは国家の管理に(2/2ページ)
白鷗大教授 石村耕治氏
そして、今度は、国民全員に漏れなく12ケタの「マイナンバー」という背番号を振り、IC仕様のマイナンバーカードを持たせれば、マイナポータル(電子政府)が実現できるとぶち上げた。うたい文句は、「マイナンバーを活用して、他機関と情報連携を行い、定期報告の添付書類など皆さまの負担が軽減され利便性が向上します」である。
政府は、当初、マイナポータルを17(同29)年1月から稼働させる予定であったが、延期になった。マイナンバーカードがあり、パスワードの設定ができれば、マイナポータルサイトにログイン(アクセス)して、各種電子申請ができるようになるとのPRは早、視界不良である。血税浪費の公共工事の臭いがプンプンしてきている。
今年1月のマイナンバー制度稼動後、マイナンバーカード・システムの不具合が相次ぎ、ICカード交付も頓挫の連続である。システムを管理運営する特殊法人「地方公共団体情報システム機構(J-LIS/ジェーリス)への風当たりが強い。だが、問題の根源は、ジェーリスではなく、1億3千万人にも及ぶわが国の人口規模にある。こうした国で、全員にマイナンバーカードを持たせようとする発想自体に“落とし穴”がある。
政府は、国民全員に、マイナンバーカードを、実質「国民登録証カード」「国内パスポート」として常に持ち歩かせようと画策している。この悪巧みが裏目に出て、国民の多くは、顔写真、入れ墨のような生涯不変の12ケタのマイナンバーが片面に記載され、紛失したら超危ない“電子証明書/電子印鑑”カードの取得に消極的である。
わが国の電子政府モデル(マイナポータル)は、パソコン(PC)があり、マイナンバーカードとICカードリーダーがないと、サイトにログイン(アクセス)できない仕組みである。だが、スマホやタブレット端末を頻繁に持ち歩く時代である。PCだけしか対応できないマイナポータルは、明らかに時代遅れ。ガラパゴス化も時間の問題だ。
マイナポータルでマイナンバーカードを利用するといってはいるが、実はマイナンバー自体を利用するわけではない。むしろ、マイナンバーカードに登載された電子証明書(電子印鑑機能/公的個人認証/PKI)を使った、成りすましの防止、安全なログインがねらいだ。
世界を見渡すと、今や、ICカードやカードリーダーを使わない電子政府モデルが主流である。データセキュリティーには、現在ネットバンキングなどで活用されている「ワンタイムパスワード」を使っている。また、電子政府サイトへのログインには、ICカードに登載された電子証明書ではなく、「パスワード+3つのQ&A」などを使っている。オーストラリアの電子政府(myGov)はそうしたデザインになっている。
国民全員、1億3千万のICカードの発行など、どだい不可能である。思い切って「マイナンバーカードの廃止」に舵を切ってはどうか。わが国のマイナポータルを、ICカードを使わないでログインできる仕組みに変えるべきだ。仮に電子証明書/電子印鑑を存続させたいのであれば、ジェーリスから切り離し、各自治体、各種民間の認証機関が発行したものを活用すればよい。でないと、マイナポータルは、利便性が悪く、3000億円もの血税を注ぎ込んだあげく大失敗した住基ネット(住民票コード、住基カード)の二の舞になるは必至である。IT利権優先、血税浪費のマイナンバーカードは要らない。