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創立100周年を迎えた「法華会」 ― 多彩な人々“宗教的交流”(1/2ページ)

本門法華宗清川寺副住職 石川清章氏

2014年11月7日
いしかわ・せいしょう氏=1976年、静岡県生まれ。立正大仏教学部卒、同大大学院文学研究科仏教学専攻修士号取得。法華会100周年記念事業実行委員会委員、世界宗教者平和会議(WCRP)日本委員会青年部会幹事長などを務める。

法華会が創立100周年を迎えた。その歴史において姉崎正治(日本宗教学の創始者)、加治時次郎(平民病院創立者)、加藤高明(第24代総理大臣)、五島昇(東急電鉄社長)、新村出(『広辞苑』編纂者)ら、地涌の菩薩を思わせる数多の会員を輩出し続けてきた。

5月12日、発会の故地である小石川後楽園(東京都文京区)にて記念式典を挙行し、同月29日に開催した記念講演会及び祝賀会には、新旧の日蓮法華門下の要路が参集するのみならず、政治、企業、研究機関など多彩な分野からの出席があった。

◆「宗教的な会合」

法華会の特徴をあらわす言葉の一つに、「宗教的な会合」がある。この言葉は1913(大正2)年12月に、創立者の山田三良・東京帝国大学法学部長(1869~1965)によって、法華会の組織体の在り方として言明されている。

この言葉の現代的な理解を試みると、なかなかに困難を伴う。例えば「宗教的コミュニティー」と言う場合、それは同一の宗教や信仰を持つ人々による共同体を指し、法華会が標榜する、自由で知的な法華経と日蓮聖人の御教えの探究とは趣を異にする。「宗教的な会合」とは、個々人が研鑚した信仰に発する宗教的感化力によって結ばれた、自然な精神紐帯という面があるだろう。

法華会が近現代一級の知識人を擁しながら、同時に草莽より地涌千界を思わせる熱烈な会員を輩出し続けたことも、或いは宗教文化誌『法華』が特定分野の学術研究の開陳に止まらず、むしろ人文社会と自然科学の立場の区別さえなく、個々の職能や生活そのままに、社会現象一切を、その御教えに基づいて意味付け得たことも腑に落ちる。

このような法華会の特徴は、「真正なる信仰に発する宗教的感化力を以て、僧俗の別を超えた多分野横断的かつ学際的な交流を開拓する」(法華会100周年宣言文)ものとして、さらなる100年に継承されるであろう。

◆宗教文化誌『法華』

法華会が1世紀にわたり刊行し続けている、我が国最初の宗教文化誌『法華』も、創立100周年を契機に、千号を超える内容のデータ化事業が始まっている。この取り組みの狙いは、学術的な資料の活用に努めるべきとも読み取れるが、再往考えれば、一大転換期である近現代の社会現象を、法華経と日蓮聖人の御教えに基づき意味付けるという、壮大な営為を保全しなくてはならないとの意図が本当であろう。

その意味付けとは、日蓮法華の信仰に生きる各方面一級の識者による現実的提言に他ならない。故に『法華』と言うも所謂宗教文化誌のカテゴリーに止まるものではない。同時代としての近現代を生きる私たちを導く、生きた亀鑑であり具体的指南であると言えるであろう。

最近では、現代金融コミュニティー論の第一人者である吉原毅・城南信用金庫理事長、坂詰秀一・元立正大学長、久保田正尚・法華会理事長の鼎談で、国際経済システムの功罪を論じ、人々がより人間らしい生活をするために、宗教者が果たすべき具体的な役割とは何かが論じられた。『法華』の編集方針は「より社会に開かれた力強い誌面作り」であり、こうした気質が脈々と流れている。

◆社会現実との対峙

創立者の山田博士が、既に1914年5月12日の発会式で、「既往五十年に於て、専ら西欧文明の輸入に力を用い、専ら物質的方面の発展に腐心」「極めて不健全なる国風民俗を作り」と慷慨するように、法華会創立の動機の一つには、近代モダニズムとの対峙があった。

にわかには想像し難いが、当時、安易な進歩主義や産業中心の社会となり、肥大化する欲望の濁流に精神的美質が蝕まれ混沌としていた。「歴代内閣の経済指南番」と呼ばれた経済評論家・木内信胤氏(1899~1993)は、90年の総会記念講演で法華会の歴史を振り返り、法華会創設の10年前に始まった日露戦争について、「あの戦争は国運を賭した大変に怖い戦争であった(中略)どうしてもやらねばならないので始めたということを是非とも知っておいてほしい」と、創立前夜の国家存亡に関わる緊迫感を切々と語っている。そこからは国家的危機を打ち忘れ、社会の急激な進展に適応できず文化遅滞に陥った大衆の姿を感じさせる。

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