信仰に依る支“援”=支“縁”の構築 ― 被災者と“同化”せずに(2/2ページ)
曹洞宗東日本大震災復興支援室分室主事 久間泰弘氏
これまで、信仰という客観性(反恣意性)と自我という他人事(恣意性)の違い――自らの都合にならない活動――を至らないながらも明確にしようとして実行してきたことが、被災地・被災者をはじめ、各地行政や社会福祉協議会という内部支援者からも支援活動時に信頼を得た大きな要因の一つである。殊更に宗教者の立場を掲げず、その信仰心が静かに滲む姿勢。そこでは、「仏」という自己超越者によって、その信仰の客観性が担保されるのである。
ここで信仰と支援活動の連動性について少し具体的に触れてみたい。例えば、行茶(傾聴)活動は、少なからず言葉とこころの遣り取りを交えるが故に、自らの宗教的気づきを促されることがある。つまり、相手との対話を通じて、自らの信仰を確認させられることである。そこに何らかの疑念や好悪がある場合は、それはそのまま、自身の宗教的信仰の不確定要素が露呈されることになるのである。
支援とは、つまりは人と場所、そしてその内容を考えていくことである。それは即ち、自分には何が出来るのか、自分とは何者であるかを見つめ直していく作業といえる。これからも支援を継続していく時に、自分は何者であるのかを信仰に依って問い続けた後に、その宗教的自己によって他者の存在を認識してはじめて、支援=縁という関係性が構築される。このプロセスを経た者こそが、本当の意味での「支縁する宗教者」と定義づけられるのではないだろうか。
※曹洞宗青年会/曹洞宗復興支援室におけるこれまでの活動実態
全国曹洞宗青年会(以下、全曹青)では、第18期以降、常設の「災害復興支援部」において「全国曹洞宗青年会災害等ボランティアに関する組織体制のガイドライン」を策定し、有事の際に備え各種職務を設定。また、平時の災害対策研修会などで会員の意識啓発と訓練に努めている。東日本大震災での曹洞宗青年会による災害対応は、結果的にこれらの組織整備が機能することとなった。
平成25年5月からは、曹洞宗全体の復興支援活動の窓口「曹洞宗 東日本大震災 災害対策本部 復興支援室 分室」が設置され、全曹青災害復興支援部との協働により今日に至る。
平成23年3月の発災以来、これまで全国130団体(一般個人・団体含む)、現地活動者延べ人数5813人(平成26年2月末日現在 曹洞宗災害復興支援室分室/全曹青災害復興支援部統計)を数える。
活動内容としては、物資支援、一般ボランティア、寺院復旧活動、読経供養、行茶活動(傾聴ボランティア)、電話相談窓口『観世ふぉん』の開設、孤立防止の「文通プロジェクト」、自立支援の仮設住宅ワークショップ。慰霊写経活動、原発事故による避難者へのサマーキャンプ開催、除染ボランティア、また、CSR(社会責任プログラム)としての「チャイルドラインふくしま(http://www.childline.or.jp)」立ち上げ・運営協力などがある。