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街を盛り上げる宗教のチカラ ― 住民の暮らしを豊かに(1/2ページ)

㈱地域環境計画研究所代表取締役 若狭健作氏

2014年1月1日
わかさ・けんさく氏=1977年生まれ。関西学院大総合政策学部卒業後、都市計画・まちづくりにかかわるコンサルティング会社・㈱地域環境計画研究所に入社。2009年から代表取締役。各地で住民ぐるみの地域計画づくりにかかわりながら、地元尼崎のフリーマガジン『南部再生』の発行や工業地帯の運河網を活用した「運河クルージング」などを企画。

「まちづくり」にかかわる仕事をしている――と言うと、住宅開発でもしているのか? 市役所に勤めているのか? などと思われるかもしれないが、「まちづくり」と言いながら建物も道路も“作らない”。その街で暮らす人たちの想いや地元愛をカタチにするために、様々な仕掛けをおこすのが僕の仕事だ。

街をもっと好きになって何度も訪れたり、住み続けてもらえるように、行政や商工会議所、観光協会などと一緒にプランを練る。そんな仕事を通じて出会った「宗教性」についてご紹介したい。

◇街の記憶を復活させる

僕が暮らし働く街、兵庫県尼崎市。大都市大阪に隣接し、戦前から高度経済成長期にかけて急激に人口が増加した工業都市は、同時に企業から排出されたばい煙による、大気汚染公害に傷つき、ぜんそくなどの気管支系疾患に悩まされた人々が多く暮らす。公害認定患者と企業は長く裁判で争い、1999年にようやく和解を迎えた。

「この街で暮らし続けたい」という彼ら彼女らの想いを受けて、裁判所からの和解条項には「尼崎地域の再生」に和解金を活用することが挙げられ、2001年に市民団体「尼崎南部再生研究室」が設立された。

大学を卒業したばかりの僕らはその団体の事務局を任せてもらえることになった。とはいえ「地域の再生」なんて壮大な目標を前に、何から手をつければいいのか分からない。すると、公害患者の方から、かつて海沿いで作られていた「尼いも」というサツマイモの存在を教えてもらえた。

現在は工場が建ち並ぶ臨海地域は、元は江戸時代の新田開発で広がった埋め立て地。そこでは菜種や綿花が栽培され、中でも「尼いも」と呼ばれたサツマイモは高級食材として、京都や大阪の料亭にも出荷されていたという。

しかし、工業化の波で田畑が転用され、さらにジェーン台風や室戸台風による度重なる水害で、この「尼いも」は1950年頃には絶滅していた。

「死ぬまでにもう一度食べたい」。そんな公害患者の声から、復活プロジェクトが立ち上がった。一人の元中学教師が聞き取りを重ねて人々の記憶をまとめ、幻の種芋を求めて農林水産省の研究センターへ足を運んだ。そこで1600もの品種の中から、「四十日藷」という当時栽培されていたであろう品種を見つけ出し、2003年に再び尼崎での栽培が復活したのだ。

この感動を一体誰に伝えたらいいのか。そうだ、氏神さまにご報告しよう。と思ったのはとても素朴な感覚から。尼崎城主からも篤い崇敬を受け、夏の勇壮なだんじり祭りで知られる貴布禰神社で2010年から毎年秋には「尼芋奉納祭」という神事が執り行われるようになった。

◇地域を結ぶパブリックな空間

公害患者の方々は、工場の煙や病だけでなく、いわれなき偏見や差別にも苦しめられてきたという。地域社会と断絶した彼ら彼女らが、郷土の味を通して再び地域に迎え入れられたと見るのは少しドラマチックすぎるのかもしれないが、神殿で氏子総代らと並んでお祓いを受ける姿には、やはり感慨深いものがある。

江戸時代の新田開発から工業化、公害に傷ついた激動の尼崎の臨海地域を見つめ続けていた「きふねの神様」がこのサツマイモを美味しく味わっていただけたのならうれしい。こうした地域のつながりを結ぶ場所として、そのパブリックな存在価値が今まさに問われている。

戦後、都市には公民館や地域の会館、学校や図書館、交流センターといった多くの公共施設が整備されてきた。しかし人口減少時代が到来し、これらを維持するためのコストを自治体ではまかないきれない状況に直面しており、今後もその傾向は強まるだろう。

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