〈ゴータマ〉の大予言 みんなが「わたしの人生」を生きるために…ひろさちや著
本書は、2022年に死去したひろさちや氏の仕事場から見つかった未発表原稿(09~10年にかけて執筆か)を刊行したもので、日本の行く末や人間の生き方についての根本的な問いを読者に突き付ける一冊となっている。
ある日の街角で、風来坊の青年ゴータマとインドの財閥の会長が出会う、という場面から始まる。この二人は明らかに、釈迦とマガダ国のビンビサーラ王をもとにした人物造形となっており、しばしば訪問するゴータマの語りから会長が得た教訓を書き留めたノートを著者が解読し、現代日本の状況に応じてその内容を翻案した、というやや複雑な体裁で議論が進められていく。
著者はゴータマについて「現在の世の中にあっての処世の術を語るのではなく、永遠の彼方にある『理想の社会』『ノーマルな(正常な)社会』においての人間の生き方を語る」と解説。それだけに「大予言」とされているものは「義務教育は必ず廃止になる」「資本主義経済は遠からず崩壊する」など、一見して驚くようなものばかりが並ぶこととなる。しかし現代社会への著者自身の鋭い批判的まなざしと、諸行無常や少欲知足など仏教の基本原理に基づく説明により、丁寧にその意図が解きほぐされていく。
定価1980円、佼成出版社(電話03・5385・2323)刊。