心とからだを磨く生き方 「よい呼吸」が人生100年を支える…帯津良一・横田南嶺著
体、心、命が一体となった、人間丸ごとを対象とするホリスティック医学の日本における先駆者と、呼吸を整え身体を整えると心も整う、という禅の教えに生きる管長との対談――。といっても、堅苦しい議論の応酬ではない。日常的な話題から心と体の健康術や生活術を思いのままに語り合う、談論風発のやりとりをまとめた一冊である。
年齢差は28歳。米寿を迎える医師と還暦の禅僧が、それぞれの人生経験を踏まえて共鳴し、同感し合う。どちらも相手を信頼し敬意を表しているから、友人同士のように話が弾む。真剣なようでいて笑いが起きる。
「お酒は生き甲斐」で毎晩晩酌してから寝るという医師が「管長さん、お酒は飲まれるんですか?」と尋ねると「お付き合いの席では、はじめの一杯のみいただきますが、ふだんは飲みません」と応じる。医師は「脳梗塞にならない配慮はしてきたつもり」と健康法を披露する。
要するに、二人ともどこか突き抜けている。人生への達観があるから、発言にこだわりがなく、自然な形で「心とからだ」の話題が展開する。人間丸ごとの健康を唱えて生きてきた老医師が、生と死を見極めてきた禅僧のフトコロに飛び込んでくつろいだ――そんな印象が読後の余韻として残る。
定価1650円、インターブックス(電話03・5212・4652)刊。