悩んだら『歎異抄』 親子・家族関係の相談からカウンセラーが見つけた光…富田富士也著
「『歎異抄』の言葉には「一人ぼっち」から旅立ち、人とのつながりを見出し気持ちを分かち合うための“発想の転換”があります」
親子関係などの相談に40年以上携わる著者は、教育・心理カウンセラーとしても知られ、その経験から親子問題には、特に子どもが自己肯定感を持てないことに原因があると指摘する。親が自ら描く理想像を語り、子どもに努力を求める。応えられない子どもは自らの存在を受け入れてもらえず、ひきこもりや不登校、逸脱行動につながる傾向があるという。
そこで著者が注目したのは、親鸞聖人の思想が語られた『歎異抄』だ。人間全ての存在を善悪の区別なくそのまま受け入れる思想、人間存在の絶対的肯定を意味する「摂取不捨」である。それは、もつれた親子・家族関係の原因となる、失われた子どもの自己肯定感を取り戻すきっかけとなると考える。
本書は14章で構成され、各章で『歎異抄』から引いた一節をテーマに相談事例を説明、カウンセリングのポイントを一言添える。
「人と生身でつながってこそ、人はその存在を『肯定』され、心の渇きを潤す」。孤独について相談する若者らが増えるデジタル社会の中、対話の重要性がより大きくなることを強調する。
定価2090円、法藏館(電話075・343・0458)刊。