マンダラの新しい見方…森雅秀著
著者はマンダラという語が、本来の意味から離れ「人間マンダラ」などと使われるほか、仏教書でも「仏の宇宙」や「悟りの境地」といった捉えどころのない言葉で済まされていると指摘する。日本では、神仏に関する図像や造形の多くをマンダラと呼称している。
日本に伝わる以前のインドでは、マンダラは灌頂儀礼に関するものだった。
日本に初めてマンダラを伝えたのは9世紀初頭に唐に渡った空海だ。現地の絵師に制作させ、両界曼荼羅を持ち帰った。日本では高雄曼荼羅が制作され、転写された。密教に関する曼荼羅のほか、熊野三社を含む景観図も熊野宮曼荼羅と呼ばれている。
浄土系では、當麻曼荼羅や智光曼荼羅、清海曼荼羅がある。浄土系の曼荼羅の図像成立時にはマンダラとは呼ばれていなかったが、密教の曼荼羅が伝来して以降、マンダラと呼ばれるようになった点に日本人がどのようにマンダラを捉えてきたかが分かると著者は説く。
「南無妙法蓮華経」を中心に墨書きし、周囲に様々な神々の名称を記し文字で表現する日蓮宗の曼荼羅本尊、マンダラを持たない浄土真宗の名号本尊など、日本独自に展開したマンダラの在り方を解き明かす。
定価3960円、法藏館(電話075・343・0458)刊。