日本仏教を変えた親鸞の独自性 『教行信証』と『選択集』の比較から見えてきた、念仏の真価…根津茂著
一般企業に勤めた後、真宗大谷派の僧侶となった著者が、親鸞の『教行信証』から学んだ教えを法然の『選択本願念仏集』と照らし合わせながらまとめた。著者は両書を同時に学ぶことによって法然門下の対立を親鸞がどのように考えていたのか、法然と親鸞の微妙な差異も分かるとする。
著者は教行信証について、選択集を擁護弁明し、その真実性を明らかにするために書かれたと位置付ける。新しい仏教の宣言書である選択集は、専修念仏のラジカルさから朝廷や従来の聖道門仏教を刺激して弾圧を受けたが、親鸞は、七高僧をはじめ様々な宗派の祖師が念仏を称賛してきた歴史を教行信証で描くことで、専修念仏が伝統に裏打ちされた教えであることを確かめた。
意外にも教行信証で法然の言葉を引用するのは1カ所しかない。そのため「法然に対する評価が軽い」との見解もあるが、これを否定し、反論の書であるため選択集自体からの引用は少ないと説く。しかも引用方法には特別な意図があるとし、冒頭と結論部分を抜き出すことで選択集の全文を入れる構造になっているのだとする。結論の「仏の本願に依るがゆえに」を踏まえ、親鸞は、回向するのは人間ではなく仏であり、念仏は自力の行ではないことを強調しているとする。
定価1980円、法藏館(電話075・343・0458)刊。