改訂新版 鐵舟居士乃真面目…圓山牧田・平井正修編
臨済宗国泰寺派全生庵(東京都台東区)は山岡鉄舟(1836~88)が幕末から明治維新にかけて国事に殉じた人々の菩提を弔うために創建を発願し、1883年に完成した。鉄舟没後、圓山牧田・第3世住職は寺誌や什物、居士の自叙伝、言行一班、遺稿、戊辰談判筆記などの史料を集成し、1918年に「全生庵記録抜粋」を編纂。その中から言行一班のみをまとめて刊行したのが本書だ。
編纂には約20年が費やされ、鉄舟の家族や知人、門人への取材を基にその言動を紹介。江戸城の無血開城など時代を左右する大きな局面で、鉄舟がどう行動したかがうかがい知れる。没後75年となる1962年には先代の平井玄恭・第6世住職が再版。本書は原文の漢詩、漢文を読み下した文章が多かった再版に、東洋大講師の佐藤厚氏による現代語訳を加え、7月19日の鉄舟忌に合わせ改訂新版として刊行された。
毎年、この日の法要には鉄舟を慕う衆議院議員の石破茂氏が参列し、国政に携わる上での範としていることを明らかにしている。時代とともに鉄舟を知らない若者も多くなってきている。次期総裁、さらには総理大臣を狙う政治家が尊敬する鉄舟とはどんな人物だったのか。本書を通して学んでみるのもいいだろう。
定価1980円、佼成出版社(電話03・5385・2323)刊。