はじまりの神道神学、希望への道標…小堀邦夫著
昨年9月に帰幽した元神宮禰宜・元靖国神社宮司の遺著。青年時代の原初体験になった故郷和歌山での公害問題を踏まえ、文明社会での神道的な生き方の手掛かりを探求する。
前半は上代日本語の分析から祭祀の意味を考察。後半では思想家や科学者の議論に導かれながら環境問題などを考える。前後の違いに戸惑うが通底するのはエネルギー問題だ。
日本語にするとエネルギーは「チカラ」。その語源はカグツチやイカヅチなどの「チ」に、国柄などの「カラ」が付いて「霊の本質」を意味するという。「税」をチカラと訓じるように稲の徴収で蓄積された資産・資源は血液のように国土を巡り社会を動かすエネルギーとなるがその循環の健全さが問題だ。それは経済問題であり資源の問題でもある。
文芸評論家の保田與重郎氏の論を踏まえて「ことよさしのままに」生きる暮らしを提案する。祝詞に頻出する「ことよさす」の語は「(神々が)委任する」と訳されるが、祝詞での用法を検討すると、単なる委任ではなく、神の助けの意味もあるとする。神が助けるということは、神も共に労働にいそしんでいるということであり、天照大神が田を耕し、祭りを行う存在でもあることと重なる。祀る側と祀られる側を区別しない「神ながらの道」を模索する。
定価2420円、和器出版(電話03・5213・4766)刊。