英国人尼僧、ティク・ナット・ハンと歩む…シスター・アナベル・レイティ著、池田久代訳
世界各国にマインドフルネスや瞑想を広めたティク・ナット・ハン(1926~2022)の弟子である著者が自身の半生やハンとの思い出をつづった。幼い頃から現在に至るまでの様々な出来事を詳細に描写し、その時々の複雑な心の揺れを記す。
幼少期は電気が通らない英国の片田舎で両親に愛情を注がれながら育ち、進学したロンドン大、大学院ではギリシャ語やラテン語、古代インド語など比較言語学を学んだ。その後、教師となったが、28歳の時、ギリシャでチベット仏教に出合って改宗し、37歳でハンの下で出家した。
心には常にキリスト教など宗教的な関心があり、家族愛、人間関係に対する深い洞察が随所で展開される。
ハンの活動拠点であるプラムヴィレッジ(フランス)の発展には著者とシスター・チャンコンの存在が欠かせないという。チャンコンは自叙伝で、ハンの前半生を書いていることから、本書との2冊でハンの生涯の細部を知ることができる。
序文で、著者は「日本の読者のみなさまが仏教の教えの深い意味を発見されることを願っています」と記している。一人の尼僧が「真実の徳」を探す生きざまは、多くの人に勇気と感動を与えるだろう。
定価2970円、春秋社(電話03・3255・9611)刊。