高津正道の僧籍剝奪を問う…高津正道の僧籍剝奪を問う会編
高津正道(1893~1974)は日本共産党設立参画・同党脱党を経て1945年の日本社会党創立に参画し、衆議院議員(当選5回)や衆議院副議長などを歴任した人物。広島県久井町(現三原市)の浄土真宗本願寺派南光寺出身で同寺住職も務めたが、第一次日本共産党事件で禁固刑が確定した26年に同派から僧籍剝奪の懲戒処分を受けた。
この処分は大正天皇の大喪恩赦で赦免されるが、僧籍復帰の条件として「前非悔悟」の上で新たに冥加金を納めて再度得度することが求められた。高津は僧籍を回復させていない。本書は高津の生涯や親鸞理解、本願寺派の戦争協力の歴史などを論述し、教団の対応を検証する必要性を主張。高津がマルクス主義の影響で1930年代初頭に起きた反宗教運動の中心的存在の一人として「無産者大衆から搾取する支配階級と宗教とが一体化しているという危機感」を示した動きにも紙面を割き、近代宗教史を知る上でも興味深い。
「高津正道の僧籍剝奪を問う会」呼びかけ人の小武正教氏は、高津には宗教教団の国家権力からの自立に対する問題意識があったとし、「『新しい戦前』と言われる今だからこそ、高津正道が本願寺教団に突きつけた問いを広く知ってもらうことは意味がある」と述べている。
定価1870円、法藏館(電話075・343・0458)刊。