滝沢克己の現在 没後40年記念論集…滝沢克己協会編
宗教としてのキリスト教受容を実存的な問題として考え、また日本人のキリスト教理解や精神性に重要な影響を与えた人物を挙げるとき、内村鑑三、椎名麟三、遠藤周作らと共に、哲学者であり神学者として知られる滝沢克己の存在は、独自の位置を占めている。
本書は、滝沢の資料収集・整理・保存や思想研究および会誌発行による啓発活動を行うNPO法人が、滝沢の没後40年を記念して刊行した。14人の執筆者が現代における滝沢神学・滝沢哲学の現在地を探った論文を集めたものである。
滝沢は九州帝国大で西洋哲学を専攻し、卒業後は西田幾多郎の哲学に没頭した。またフンボルト協会給費生としてドイツに渡り、ボン大学でカール・バルトに師事して神学を学んだ。
西田、バルトとの交流は滝沢のキリスト教神学理解を深化させ、「神われらと共に在す」という事実の上に神と人間の関係があるとする「インマヌエルの哲学」を展開した。
収載論文は、キリスト教神学や哲学史の上での滝沢の影響などを論じている。本書を契機に、滝沢神学あるいは滝沢哲学への関心を呼び起こされた者は、滝沢自身の著書に自ら直接踏み込んで、その思考の跡を尋ねることを促されるに違いない。
定価3740円、新教出版社(電話03・3260・6148)刊。