江戸大仏…三船温尚・杉本和江編
江戸時代に全国各地で造立された大型鋳造青銅仏、いわゆる「江戸大仏」計48体と、その木造原型像を、3次元レーザー計測など最新の手法を用いて多面的に検証し、同時代における合理的な大仏の生産体制と、民衆信仰の在り様を明らかにする一冊。貴重な像内写真や3Dポリゴン図、構造や製造過程が分かる組み立て部品図など約千点の図版を掲載。江戸大仏に関する最新の研究成果を網羅する内容となっている。
江戸大仏は、江戸時代に民衆の寄進によって造立された大型の鋳銅製の仏像群の総称で、天台宗寛永寺(東京都台東区)の上野大仏や、真言宗豊山派大本山護国寺(同文京区)の護国寺大仏などが代表的な例として挙げられる。著者らは約20年間で48体の江戸大仏と2体の木造原型像を調査し、合理的で効率的な製造方法や、それぞれの大仏の関係性などを明らかにした。美術史的な視点にとどまらず、仏像建立の背景にある庶民の信仰の在り方にも言及するなど思想史研究としての価値も高い。
日蓮宗大本山中山法華経寺(千葉県市川市)の法華経寺中山大仏を「江戸大仏を考察する上での指標」と定め、3D計測による厚み分布図、鋳造シミュレーション解析など、最新の技術を駆使し徹底的に分析した。
定価2万4200円、八木書店(電話03・3291・2961)刊。