東洋学術研究 第63巻第1号 東洋哲学研究所編
東洋哲学研究所の創立者である池田大作SGI会長が昨年死去した。巻頭に桐ヶ谷章・前所長や、親交の深かった中国、ロシアの識者による追悼文を掲載している。
特集「つながらない時代の『生』を考える」では「つながり」の重要性が叫ばれながら、つながることができずに生きる人々の存在や、社会に山積する諸課題が「つながり」だけでは解決されないという問題意識を共有。その上で、具体的な人々の生から「つながり」の可能性を多面的に論じている。宮城孝・委嘱研究員は、被災地の厳しい環境の中でも被災者同士がつながることによって生へのレジリエンス(復元力、再起性)を発揮した事例を紹介。そのことを踏まえ「血縁や地縁、また会社内における人間関係が希薄化・形式化する傾向にあって、今後深刻な問題を抱えている人々をサポートする人やグループ、また組織などを様々な地域、社会の場所や場面において機能させていくことが必要」と、社会的孤立の防止を訴える。
昨年行われた連続講演会「21世紀の精神のシルクロード――平和への道筋を考える」の講演録4本も所収。人間と人間が平和に向けて心をつなぐ営みとして創立者が提唱した「精神のシルクロード」について、現代的な視点から問題提起している。
定価1400円、東洋哲学研究所(電話042・691・6591)刊。