よもやま歴史風土記 琵琶湖水系三都と諸国の「問故知新」…本郷真紹著
著者は立命館大特命教授で、同大で長年、日本古代史・宗教史を講じてきた。立命館大は関西の私学の雄として知られるが、在学生の半数近くは関西以外の出身者で、学生の父母でつくる父母教育後援会を各都道府県に設置。本書は我が子が学ぶ関西の歴史や文化を知ってもらおうと2018~22年度に後援会のホームページに連載した日本史四方山話を加筆修正して一冊にまとめた。
取り上げているのは近江・山城・摂津を中心に丹波・丹後・播磨・越前・若狭・大和・河内・和泉・淡路・紀伊・伊賀・伊勢の近隣諸国。さらに東北、関東、中四国、九州にも話が及ぶ。いずれも古代史を中心とした人間模様や各地の地勢、風光、旧跡、伝統文化の由来などを親しみやすい筆致でつづっている。
歴代の天皇や有力な政治家、文化人だけでなく、最澄・空海・良弁・良源・行基などの宗教者や寺社の事績・由緒に関する話も多く収録しており、日本の風土形成に果たした宗教の役割の重さを感じさせられる。
著者は「他愛のない逸話の内容を通じて、改めて古き(故)を問い直し、各時代を生きた人間の本性に、ある部分現代と変わりのない要素が存することを知り、歴史に更なる関心を抱いて頂くこと」を願い本書の副題に「問故知新」の造語をうたったとしている。
定価1650円、法藏館(電話075・343・0458)刊。