東日本大震災13年目の支援活動(1/2ページ)
一般社団法人なごみ代表理事 大塚茜氏
私は、2011年10月から、一般社団法人なごみ(京都市下京区)という団体で、東日本大震災で京都・滋賀に避難した人たちの支援活動を行っている。この12年の相談内容の変化を可視化することで、今後求められる支援の内容とその継続について検討することを目的に、昨年2月に京都府・滋賀県に避難している避難者を対象にアンケート調査を実施した。
・調査対象:京都府・滋賀県に避難している152世帯
・回答数:41票(有効回収率27%)
震災から1年後と現在の心身の悩みを比べたところ、避難者の心身の悩みの状態は大きく改善したものの、「悩みを抱えて眠れない、辛い、生きる気力がない」といった状態にある人が10~28%いるということがわかった。
また、その具体的な内容として「経済的な問題」や「自身の心身の健康」に悩んでいる避難者が回答者の約半数に上る。さらに避難者特有の悩みである「帰還するかどうか」「東電の賠償問題」も約30%の人が悩んでおり、複合的に継続していることも判明した。
これらの問題は、なかなか進展しないとか、悪化しているとか、避難先にいる高齢の家族との課題とリンクしているなど、12年という避難生活の時間の経過によって生まれた悩みのようにも見受けられた。
特に、「経済的に悩んでいる」人が49%、「生活の拠点が決まっていない(帰還について悩む)」という回答が51%であったことは特筆すべきであると考える。東日本大震災から12年を迎える今、私たちは、この問題にどのように対応すべきだろうか。
当法人は、16~21年まで、浄土真宗本願寺派(西本願寺)に寄せられた寄付金を基に助成を受け、避難者への旅費支援を行ってきた。帰還を考えたり、離れ離れになった家族との面会や、冠婚葬祭のために帰省したいという方に旅費を支給するという事業である。皆様の浄財と本願寺派のご厚意により、6年間で延べ602世帯1380人の方に支援を行うことができたことに、この場を借りて心より感謝を申し上げたい。
この支援を受けた方のアンケートに書かれていたことは、大変印象的だった。旅費の支援をするので、「心にゆとりができた」「経済的に安心できた」という回答が最も多いのはうなずけるのだが、次に多かったのは「自主避難者の存在を認めてくれてありがたかった」「忘れられてはいないんだと、心強くなります」「認めてもらえたような気がして救われた」「気持ちが軽くなり、前向きになれた」というような回答であった。
周知のとおり、避難者は、地震や津波の被害で避難しただけではなく、原発事故の影響を考えて自分の判断で避難したという人がたくさんいる。そんな避難者の中でも特に自主避難者と呼ばれる人たちは、勝手に逃げた人・神経質な人のような世間の印象もあって、肩身の狭い思いをしたり、揶揄されたり、中傷されたりした経験を持つ人も少なくない。したがって、避難者はあまり自分の体験を避難先で語らないし、語れない。「言ってもわかってもらえない」からである。
東日本大震災の復興を世界中にアピールしたい国や県の中枢の人たちからは、「避難者」という言葉を使わないようにしたらどうか、という議論も出ると聞く。そうすれば、たちまち「避難者」の存在はゼロになるからだ。こういうニュースに接するたびに、「自分たちの存在がなかったことにされているようだ」と多くの避難者が口にする。避難者数が減っても、被災して避難したという体験は消えるはずもない。だから、自分の体験=存在を消されるように感じるのだろう。
そんな抑圧の中で生きている避難者にとって、本願寺の旅費支援は、金銭的な支援だけのみならず、自分の存在価値を認めてもらえたと感じられた支援と感じられたのだと思う。