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大理崇聖寺フォーラムに参加して(2/2ページ)

臨済宗妙心寺派平田寺先住職・常葉学園大名誉教授 竹中智泰氏

2018年1月19日
四僧塔参拝

24日午後、崇化法師の特別の計らいで専用車を用意していただき、分科会の合間をぬって四僧塔へ参拝した。四僧塔参拝は大理を訪れる第二の目的であったから、このご配慮はありがたかった。四僧塔とは、明代初め、政変に巻き込まれた日本人留学僧4人がこの地に流され没したとされるが、その僧たちを大理の白(ペー)族の人びとが手厚く葬り建てた供養塔で、以後600年にわたり現在まで供養し続けている。ありがたいことである。塔は、人気テレビドラマ「天龍八部」の撮影に使われた天龍八部影視城という映画村の中にあり、高さ約6メートル、幅約3メートルの縦長のドーム状で塔上には雑草が生えているものの、当時のままの姿をとどめている。

映画村の入り口近くに車を止め、ドラマで使用された建物が幾つも並んでいる中を徒歩で約20分、映画村の一角にひっそりと佇む供養塔に到着する。故高倉健が整備のため1万ドルを寄付した話は有名で、いろいろな寄付金で賄われているのであろうか、きれいに整備された周囲には日本建築を思わせる建物も建てられていた。通訳の任さん、ボランティア学生の楊さん、運転手君に参列してもらって、私は袈裟を着け、焼香三拝して『大悲呪』一巻を読誦し、回向を唱えた。ささやかな供養であったが、供養を終えたあとは大理の空のように心が澄みわたり、しばし法悦を味わうことができたのはかけがえのない経験だった。

現代中国と仏教

フォーラム中によく耳にしたのは「人間仏教」(Humanistic Buddhism)というキャッチフレーズだった。今中国は国を挙げて仏教の興隆を行っている。それは各地の有名寺院の伽藍復興というハード面のみならず、人間の内面にむけて仏教思想の重要性を説くソフト面での政策にも及んでいる。このフォーラムもその一例である。真の狙いがどこにあるのかはまだ定かに理解できないが、人間性や人間の心の向上を国がリードして行っているという印象は強い。おそらく十数億という国民を抱える巨大国家をまとめていくために仏教思想が最も有効であるということではないかと思う。社会主義と宗教の共存ということが可能か否かは筆者の関心事ではない。「人が真に人として生きていく」ために仏教思想が求められるならば、一仏教者として大いにこれに賛意を表するものである。宗教に疎くなっているといわれる我が国もこの点では見習うものが多くあるのではないかと思う。

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