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ザ・タイガース 44年後の音 ― 自分の生き様を表現(1/2ページ)

国際日本文化研究センター准教授 磯前順一氏

2014年1月23日

拙著『ザ・タイガース 世界はボクらを待っていた』(集英社)を脱稿後、私は昨年12月3日のタイガースの武道館コンサートのオープニング・アクトを待たずして、ドイツに出発した。そこでの仕事を終えた2カ月後、震災の復興景気で賑わう仙台でのザ・タイガースのコンサートを見るために、日本へと戻ってきた。2013年の「ザ・タイガース・ツアー」は、12年の沢田研二ツアーに不参加であったリード・ギターの加橋かつみも加わり、オリジナル・メンバーの5人が全員揃うことになった。1969年3月5日の加橋脱退から、実に44年ぶりのことである。

今回のツアーを招集した沢田研二は、各メンバーに、「これまでどのように各人が生きて来たのか、それぞれの人生をステージの音として現われるようにしてほしい」と、要望を出した。その思いに応えるように、瞳みのるは「音にはその人の生き様が出る」「タイガース解散後、自分が音楽の外の世界でどれだけ懸命に生きてきたかを、ファンの皆さんに音で示せなければならない」と、仙台の楽屋で筆者に語った。

それが、ファンに会わなかった40年の歳月の間、瞳がどのように生きて来たかを示す唯一無二の機会であり、音を通した彼からのメッセージとなるからだ。かつてリーダーの岸部一徳は「ぼくたちはきれいな大人になりたい」と、タイガースの音楽を頭ごなしに否定する大人たちに怒りをぶつけた。それが今回のコンサートで、60代半ばになった彼らメンバーたちに返ってくる言葉にもなる。44年後に自分らがどんなに大人になったのか、彼らはそれを、自分たちの音を通して示そうというつもりなのだろう。

そして、メンバーが取った和解の方法は、岸部や森本太郎の言うように「音楽少年」の気持ちに戻ることであった。それは今回の洋楽のナンバーとして選ばれた曲が、「サティスファクション」のように、タイガースの前身、大阪のジャズ喫茶で活躍していたファニーズ時代に得意としていた初期のローリング・ストーンズのものであったことに表れている。

加橋が「友達に戻ること」を他のメンバーに求めたように、音楽ビジネスをめぐる葛藤や反目をかかえた全盛期のタイガースを超えて、無名でも演奏する楽しさにときめいていたアマチュア時代の気持ちに戻ろうとしたのであろう。それが加橋脱退あるいは解散という傷を乗り越え、5人が「恩讐の彼方」(瞳みのる)に至る一番確かな方法だったのかもしれない。

しかし、それは高度経済成長期の昭和40年代に戻ろうという退嬰的なノスタルジアとは異なるだろう。アンコールで演奏された「美しき愛の掟」は加橋の脱退直後に発表された曲であり、それが加橋の歪んだ音色のリード・ギターで初めてファンの前で披露された。それはメンバーがグループ内の葛藤に苦しんだあの時期から目をそむけることなく、当時の葛藤に音で向き合おうとする意思表示のようにも感じられた。タイガースにとって、5人の関係が損なわれた69年3月5日は、悲しい想い出ではあっても、やはり忘れてはならない特別な日なのだ。私にとっては、今回一番心に残る曲となった。

コンサートで、沢田は「これから先、生きてゆくのにとっても不安で切なくて、辛い時代なのに、こうしてタイガースに光を当ててくれてありがとう」と語った。近年の彼の言動からすれば、平和憲法改定、秘密保護法など、現政権の動きに不安を覚えているのは間違いないところだろう。

福島第1原発を廃炉にするめどが立たないまま、放射能や津波などの影響で故郷に戻れず、生活を立て直すめども立たない多くの人たちのことを思うとき、戦後の日本社会が奉じてきた民主主義の理念が、多くの人々の幸せを犠牲にした一部の人々の特権を優遇する幻想にすぎなかったことは、今では明白である。そこから、社会の行く先に不安を感じた人々が、天皇制ナショナリズムのもたらす国民の均質化へと率先して身を投じていく光景は、かつての日本社会が経験した最も苦い歴史の一齣と重なっていく。

メンバーと同様に、ファンも辛いときも楽しいときも人生の悲喜こもごもを過ごしてきた。「時はあまりにもはやく過ぎゆく、喜びも悲しみもすべてつかのま」(「ラブ・ラブ・ラブ」)。タイガースは高度経済成長の矛盾が噴き出す時代を生きて来たバンドである。経済繁栄の傍らで、公害や過疎などによって犠牲にされる地方都市の住人やマイノリティー、ベトナムをはじめとする翻弄されるアジア諸国、そして高揚した末に瓦解する学生運動。加橋の脱退はこうした時代の転換期に呼応しようとした、若さゆえの真っ直ぐな行動でもあった。

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