「お迎え」の思想 極楽浄土への往き方…ひろさちや著
2022年に亡くなった著者の、仕事場から見つかった未発表原稿が順次出版されており、本書もその一冊。独特の視点で「極楽浄土」について語り尽くし「私たち凡夫が、死後の世界の有無についてあれこれ迷って考えないように、大乗仏教では、人は死んだらお浄土に往生すると説いた」という説明にとどまらず、その成立の背景や過程、宗派間での違いや、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教など他の宗教の「天国」との比較、また同じ仏教でも上座部仏教には極楽浄土の考え方がないことにも言及している。
その解説の一つとして大乗仏教の仏を「理想仏(報身仏)」「宇宙仏」「分身仏」の3系統に分類。居場所が宇宙の「宇宙仏」、釈尊のように涅槃に至りすでに肉体はないが地球が居場所の「分身仏」と違い、過去久遠の昔に法蔵菩薩が修行して悟りを開き、衆生を救うために四十八の本願を立てた阿弥陀仏を代表とする理想仏を「宇宙にぽっかり浮かんで人々に説法する訳にはいかず、極楽世界(浄土)という居場所が必要だった」と説明する。薬師仏や阿閦仏も理想仏という。
「来迎」の捉え方や浄土への「往き方」、人生の終焉を考えることで命の意味を知り、今を生きるための智慧となるという著者の熱いメッセージが込められている。
定価2200円、佼成出版社(電話03・5385・2323)刊。