PR
購読試読
中外日報社ロゴ 中外日報社ロゴ
宗教と文化の専門新聞 創刊1897年
2025宗教文化講座
PR
2025宗教文化講座 第22回「涙骨賞」を募集

平和で子どもが大切にされる世界を ― 状況厳しい地域重点支援(1/2ページ)

日本ユニセフ協会 団体・企業事業部部長 海老原隆一氏

2017年9月13日
えびはら・りゅういち氏=1964年、東京都生まれ。東京大文学部西洋史学科卒。民間企業を経て、96年から日本ユニセフ協会勤務。
平和で子どもが大切にされる世界を ― 状況厳しい地域重点支援

ユニセフ(UNICEF=国際連合児童基金)は、子どもの権利の保護、子どもの基本的ニーズの充足、子どもの潜在能力を十分に引き出すための機会の拡大の推進を使命とした国連機関です。

ロゴマークにあるオリーブの葉は平和の象徴であり、多くの国連機関がオリーブの葉をロゴマークに用いています。子どもが高く抱き上げられるように、平和で子どもが大切にされる世界を目指したい、という想いが込められています。

UNICEFのFはFund=基金の意で、財源はすべて、個人や民間のみなさまからお預かりする寄付金と各国政府の任意の拠出金とで支えられています。現在、ユニセフは、開発途上国を中心に世界150以上の国と地域で、保健、栄養、水と衛生、教育、HIV/エイズ、保護、緊急支援、政策提言などの支援活動を行っています。

また、私が勤める日本ユニセフ協会は、世界の子どもの状況とユニセフのことを知っていただく広報活動、ユニセフの財源を募るための募金活動、子どもの権利を守るための政策提言活動を主な任務とする、現在先進国を中心に日本を含む34の国と地域に設置されているユニセフ協会(国内委員会)の一つです。

活動原則①子どもの権利条約

ユニセフは「子どもの権利条約」を規範とし、子どもの権利が恒久的な倫理原則として、また子どもに対する国際的な行動基盤として確立されるよう努めています。

「子どもの権利」というと難しくて分かりにくく、「子どもの幸せを願う」と言った方が分かりやすいのかもしれません。しかし場所によっては、「女の子は学校に行かず早く結婚した方が幸せだ」とか「戦争で親を殺された子どもは戦士になって親の仇を討つ方が幸せだ」のように「幸せ」が各々の理解で解釈されることもあり、明文化された国際的に共通なものさしが必要だということで、1989年に「子どもの権利条約」が採択されました。「子どもの権利条約」は、「生きる権利」「育つ権利」「守られる権利」「参加する権利」が柱となっています。現在、アメリカを除く196の国と地域が締約国となっています。これほど多くの国・地域が締約国となっている国際条約は他になく、私は、その根底には「子どもの幸せを願う」想いがきっと人類の普遍的な価値観としてあるのだろうと信じています。

活動原則②公平性

2010年あたりから国際社会では「公平性(equity)」という言葉がよく使われるようになりました。ユニセフにおける「公平性」の原則とは、分かりやすく言うと「広く薄い均等な支援ではなく、最も厳しい状況にある子ども(地域)を重点的に支援する」というものです。近年は支援対象国の中でも、最も子どもの状況が厳しい地域を重点的に支援するようにしています。最も厳しい地域を重点的に支援するというのは、アクセスが難しいため一見すると非効率に思えますが、その方がより多くの子どもの命を守り、費用対効果も高いことが分かっています。

「公平性」という言葉が使われるようになった背景には、公平の反対の意味である不公平や格差が拡大し、社会が不安定になってきたことがあります。図は、世界の富の分布が、所得の多い上位5分の1の人口(Q5のところ)に集中していることを示したものです。私が日本ユニセフ協会に勤め始めた1990年代は、この図はカクテルグラスの図とも呼ばれYの字形をしていましたが、今やTの字形に近づいています。

活動原則③持続性

中国に「魚をあげるよりも漁のしかたを教える方がよい」という諺があります。その方が自立や尊厳を促し、持続性が高いからです。ユニセフも同じ考え方を持っています。

たとえば井戸を作る場合でも、井戸を作ってあげる形だと壊れてすぐに使えなくなってしまうので、まず清潔な水の重要性を説きながら、地方行政や村人たちと一緒に井戸設置の計画を立て、井戸管理組合を設置し、村の全世帯が井戸の維持管理のために少しずつお金を出し合うことを宣誓したうえで初めて、井戸設置の支援が決まります。その際、セメントなど資材の運搬や手押しポンプの組み立てには村人も必ず参加するようにします。

日蓮遺文の真偽論と思想史観 花野充道氏7月4日

1、研究者の思想史観 2023年の12月、山上弘道氏が『日蓮遺文解題集成』を上梓された。山上氏の永年の研究成果に基づいて、日蓮遺文を真撰・真偽未決・偽撰の3種に判別して示…

「寺子屋学習塾」で地域社会の再興を 今西幸蔵氏6月27日

社会に構造的な変化 全国の地域社会に危機的な事態が発生している。既存の組織が崩れ、構造的な変化が起き始めているのである。自治会が、子ども会が、PTAが、未だ一部ではあるが…

増上寺三大蔵のユネスコ「世界の記憶」登録の意義と課題 柴田泰山氏6月18日

はじめに 本年4月17日の午後8時過ぎ、浄土宗と大本山増上寺がパリのユネスコ本部に対して共同申請していた「増上寺が所蔵する三種の仏教聖典叢書」が、ユネスコ「世界の記憶」に…

宗教と災害支援 地域に根を下ろす活動の中で(7月9日付)

社説7月11日

鎌田東二氏逝去 越境する学者が目指したもの(7月4日付)

社説7月9日

ガザ無差別攻撃 武力信仰が支配する世界(7月2日付)

社説7月4日
このエントリーをはてなブックマークに追加