社会的養護・CSPという考え方 ― 望ましい行動を効果的に躾る(2/2ページ)
防府海北園副園長 岩城淳氏
CSPでは三つの理由に着目します。
一つは暴力的躾の持つ即効性です。躾に対して効果は無いのですが、怒鳴る、たたくといった行動に対し、その場で子どもの問題行動が止まったように見えると「子どもが言うことを聞いた」と親や大人の側が学習してしまいます。そうすると親や大人はその行動をとりやすくなります。
しかし、それは大人の側が学習しているだけで、子どもたちは望ましい行動、してほしい行動を学習していないことが多く、躾にはなりません。なぜかと言うと、その問題行動は継続するからです。同じ状況で子どもとぶつかってしまうということは、その時とった、怒鳴る、たたくといったアプローチでは、躾の効果は無いということです。
次に、「暴力的な躾」以外の躾を知らないことが考えられます。身体的虐待の多くは、躾ようとして起こっています。そして、親の権威の喪失への恐れです。私の講演会に参加する父母から「子どもがなめるんです」という話を聞くことがあります。子どもと真正面からぶつかっているのです。
親が子どもに対して「しまった」と思う場面は、怒っている、カッとしているときに起こりやすく、まずは落ち着くことが重要になってきます。
CSPでは、「落ち着くヒント」として、どんな場面でカッとなりやすいかを知り、自分の生理的な反応(例えば、顔が熱くなる、早口になる、頭に血が上る等)を知ることで、自分の状況を客観的に見ることを意識し、そのような時にどんな方法で落ち着くかを決めておきます。
次に「効果的な褒め方」を学びます。子どもとの関係性が悪いと、うまく躾られない。さらに厳しい躾から、関係性のさらなる悪化に陥ってしまいます。これを連続性のある良い関係に変えるには褒めることが重要になります。
私たちは、子どもの問題とされる行動に気付き、注意をしますが、良い行動を見過ごしてしまうことが少なくありません。
例えば小さい子に、靴をそろえて脱ぎなさいと教えています。その子が靴を脱ぎ散らかしていると、「靴そろえてね」と注意します。しかし、靴がそろっている場面で、これを見過ごしてしまいます。
するとこの良い行動は強化され難く、学習する可能性が下がってしまいます。悪い行動の反対は良い行動。良い行動をした時に褒める。廊下を走るのが悪い行動だったら、歩いた時に褒める。海北園の職員には、子どもに指示を出して、それに沿った行動をしたら評価するよう伝えています。
褒めることで、良い行動を増やし、職員との関係性も良くなることが期待できます。
そして、「分かりやすいコミュニケーション」という話をします。これは、あいまいな表現を無くし、分かりやすく伝えるということです。
例えば「今からレストランに行くから、ちゃんとしているのよ」や「今日はいい子にしていてね」といったあいまいな言い方ではなく、「レストランでは走り回らないで座って食べようね」と指示することです。このようにCSPでは、望ましい行動を具体的に伝える方法を学ぶことができます。
浄土真宗本願寺派をはじめ伝統仏教教団では、生老病死の現場に向き合うビハーラ活動が展開されています。
私にとってのビハーラ活動とは、父・満の残した次の言葉です。「子どもたちが幸せになれば社会はもっと明るくなる。社会がもっと明るくなればよりたくさんの子どもたちが幸せになる」。これを胸に、子どもたちが抱える悩みや苦しみに寄り添っていきたいと思っています。