たすけ合いの展開~支援から支縁へ~ 新たな絆・ご縁に期待(1/2ページ)
天理教磐城平大教会長、天理教福島教区長 平澤勇一氏
あの未曾有の東日本大震災発生から3月11日で、はや3年を迎えた。福島県は、いまだ震災の傷跡が大きく、地震、津波、原発事故の三重苦に悩み、さらに原発事故による風評被害、そして離散・分断被害が問題になっている。この離散・分断被害とは、地縁や血縁という大切な絆・つながりが、避難によってバラバラになったり、断ち切られたりしてしまっていることを言う。今なお福島県での避難者は、県内各地に約8万8千人、県外・46都道府県に約4万8千人にのぼっている。生まれ故郷に帰りたくとも帰れないのである。家族が一緒に暮らしたくても暮らせないのである。
そのような福島の状況の中で、時間の経過と共に、精神的な面で二極化が進んでいるように思えてならない。一方で、いまだ先の見えない不安にかられている人々が大勢おり、もう一方では、復興による平常化・日常化が進み、以前と変わらない物質的生活を送っている人々がいる。生活が平常通りになるにつれ、残念なことに、震災直後に目覚めた「たすけ合い」や「物や人の恩恵の有り難さ」への感謝という人間が本来持つ清らかな心が希薄になってしまってきている。とりわけ私の住む福島県いわき市では、地元住民と各地域からの避難者とのあつれきが生じ、何とも言えない辛い寂しい状況におかれている。当初は温かく受け入れていた市民も、時間の経過と共に、賠償の格差や大勢の避難者の移住によって、不平不満が生まれてしまっている。そこからも絆やつながりが薄れてきてしまっている。
天理教の支援救援活動は、「人間はみな神様の子供であり、人間はみな一列兄弟姉妹である」という御教えから、困った兄弟姉妹を「たすけたい」という強い心が働き、神恩感謝の行いである「ひのきしん」という行動につながり、支援活動が進められる。
奈良県天理市にある教会本部では震災直後に災害対策本部が設置され、全教あげての「祈り」《お願いづとめ》を執行すると共に、全教の教信者にたすけ合いが呼びかけられ、様々な支援救援活動が進められてきた。
岩手、宮城、福島、茨城の被災4県へ合計4億5千万円の義援金が届けられ、また物資(燃料、水、食料、日用品など)の支援、放射能線量計の貸与など、「物の支援」が進められた。
一方で、被災地区への医師や慰問師の派遣、避難所での子ども会の開催など「心のケア」にも取り組んだ。とりわけ、夏休みを利用して開催される一大イベント「こどもおぢばがえり」と、「学生生徒修養会・高校の部」への交通費宿泊費全額負担の支援は、心身共に打撃を受けた大勢の子供たちや学生たちに、人類のふるさと「おぢば」(天理市)で、心のやすらぎと明日への活力を与えてくれた。
天理教の「災救隊」は、明治時代に端を発する全国ネットワークの災害救援組織であり、「おたすけ」と「ひのきしん」の精神に培われた伝統的な救援支援の組織である。万が一の際には、作業機材を完備し、隊員の食事・宿泊の準備を整えるなど、全て自給自足型で対応している。今回の東日本大震災では、福島をはじめ、岩手、宮城の被災3県に2011年3月12日より7月20日まで、130日間、現地宿営地7カ所を設置し、全国各地から、そして台湾からと、延べ1万8621人が出動し、行政機関と連動して「災救隊」が支援救援活動に従事した。被災地の状況の変化と共に、その支援活動は給水活動、炊き出し、瓦礫撤去へと作業も変化し、行政や住民の方々の信頼を得ての大規模な救援活動となった。多くの住民の方々より感謝の言葉が届けられた。