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「終活」真の相談相手とは ― 死生観に向き合う宗教者こそ(1/2ページ)

葬送問題ライター 奥山晶子氏

2016年6月22日
おくやま・しょうこ氏=冠婚葬祭互助会勤務後、出版社に入り、葬儀と墓について執筆を始める。2008年、日本初の喪主向け実用誌『フリースタイルなお別れざっし 葬』を刊行。著書に『葬式プランナーまどかのお弔いファイル』(文藝春秋)、『「終活」バイブル』(中公新書ラクレ)。

葬儀業界で2年間働いた後に上京し、念願の出版職に就いたにもかかわらず、葬送の世界とは縁が切れなかった。つなぎとめたのは、業界から抜け出したとたんになだれ込んできた、親戚・友人・その他知り合いからの膨大な相談事だ。

葬儀会社では警戒してしまう。お坊さんには委縮してしまう。もと葬儀社勤務というのが、葬儀や墓、その他もろもろの相談相手としてちょうどいいと判断されたようだ。みんなから寄せられた疑問を解消しようと自分自身でも調べ、せっかくだからと誌面にまとめているうちに、葬儀を専門に研究するライターになった。

葬儀より墓の相談

相談事として多いのは、葬儀のことよりも圧倒的に墓に関することである。近年の相談事のベストワンは「お墓はいらないと思うのだけれど、どうすればいいか」というもの。最近までNPO法人の「葬送の自由をすすめる会」という、主に海洋散骨の普及に努める団体の理事を務めていたからか。しかし、相談者のうち、散骨を決断した人は1割にも満たない。樹木葬、納骨堂、合葬墓、デザイン墓など、様々な選択肢を提示するうちに心が傾くようで、いろんな墓苑のパンフレットを取り寄せる。忘れた頃、「このお墓に決めました」などと便りが届く。

要は、「お墓はいらない」のではなく、「(今ウチが守っているような)お墓はいらない」ということなのだ。「今ウチが守っているようなお墓」とは、護持費がかかり、後継ぎが必要で、新しく買えば高く、しかも何十年も変わっていないような古いデザインのお墓のことである。これらの難点をどれか一つでもクリアするようなお墓であれば、相談者は瞬時に興味を持つ。

結局、散骨を心決めるような人は、ポジティブな理由を持っている人だけである。その理由には二つある。「どうしてもあの海に還りたい」「自然に還りたい」というものだ。しかし実は、それらの理由だけでは足りない。希望の場所から散骨するのは無理ということで、散骨そのものを諦める人は少なくないからだ。「あの海に」という人にとっては、どこから撒いても良いというものではない。

また、「自然に還りたい」という人にとっては、散骨だけでなく樹木葬も選択肢に入る。樹木葬は骨壺ではなく、さらしなどに骨を入れて埋葬する形式が多いからだ。

つまり確実に散骨を実行する人の胸の内には、もっと根本的な信念がなければならない。それこそ、「墓はいらない」という信念だ。ただし本人のこんな確固とした信念も、後に遺された人によってガラガラと崩れ去ってしまう。毎年、命日やお盆の時期に散骨を行った海へ出向いて手を合わせる遺族がかなり多いからで、これは海が墓化してしまっているに過ぎない。逝く人と弔う人の意向は違って当然だが、果たして「墓はいらない」という個人の遺志が貫徹されたといえるのだろうか?

0葬に魅力感じる

「墓はいらない」という信念に「じゃあ、これはどうか」と投げかけられたのが、島田裕巳氏が提案する「0葬」だ。火葬場から骨を持ち帰らないので、散骨の必要すらない。遺骨を弔いの対象としない究極の形だ。0葬について勉強するセミナーに参加したことがあるが、「これこそ父親が求めていた形。すでに亡くなっているので、実現はできなかったけれど……」と、「骨は捨て置け」という遺言を受けていた男性が感想を漏らしていた。0葬を実現するためには、まさに火葬されたその日のやり取りが大事で、いったんお骨を受け取ってしまうと、すでに0葬ではなくなる。

ただ、特に関東以北においては遺骨の受け取り拒否ができない火葬場が大半だ。関西以西は昔から部分収骨が行われているため、「喪主にあたる人がその場で一筆書いてくれれば引き取らなくても可」とする火葬場が点在するが、「たとえスプーン一杯でもいいから持ち帰ってほしい」というところもある。その場で交渉しても、押し切られてしまうことが大いに想定される。こんな交渉事には慣れていない喪主がほとんどだから、十中八九持ち帰る羽目になるだろう。

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