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『忘れて捨てて許す生き方』塩沼亮潤著・春秋社刊

忘れて捨てて許す生き方

著者は大峯千日回峰行大行満大阿闍梨。吉野・金峯山1300年の歴史で、大峯千日回峰行の満行は2人目という。本書にも厳しい修行の体験が語られている。

例えば千日回峰行満行後に行う「四無行」。9日間の断食、断水、不眠、不臥の行で、比叡山の千日回峰行では「堂入り」に相当する。死者の白装束をまとい、半跏趺坐で念珠を繰って真言を唱え続ける。喉の渇きの苦しさは特に耐え難い。身体から水分が失われ、死臭が漂ってくるという。

ところで「行を終え、行を棄てよ」というのが著者が師からたたき込まれた教え。千日回峰行もあと1日で満行という日に、ふと思い出したのは「人生生涯小僧の心」という言葉だった。それは後に上梓した著書のタイトルにもなった。

本書はこうした著者の人柄をよく伝えるような、穏やかな語りが特徴。「もし難行苦行のみを自慢しているようなお坊さんがいたら『あれ?』と思ってください。それぞれの人生は、それぞれに難行苦行です。その難行苦行をいかに上手に生きていくか、いかに善なる方向へ転換できるかというのは、私たちひとりひとりに課せられた人生の行なのです」との一節は説得力をもって読者の心に伝わってくる。

定価1260円、春秋社(電話03・3255・9611)刊。