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1、平成の世 希薄化してゆく人間関係

真宗佛光寺派称名寺前住職日野英宣

2017.01.20~2017.02.10

  • 1、平成の世 希薄化してゆく人間関係
  • 3、情報化時代 自らを問う智慧こそ必要
  • 2、大人になれぬ子 「我を忘れる」経験少なく
  • 4、転識得智 目覚め促す出会い大切

政府の想定通り進めば、天皇陛下の退位に伴い平成は30年で幕を閉じるとのニュースが新年早々新聞紙面を賑わした。振り返れば平成の世に生じた深刻で大きな社会的変化の一つに、人間関係の希薄化を上げることができるだろう。

その兆しは早くから指摘されていた。21世紀を10年後に控えた平成3年に、有識者で組織する近未来学会が「21世紀はどのような社会になるか」との予測を試みた。政治経済については議論百出で統一見解を出せなかった。しかし、社会面については「今後30年間に離婚と非行と精神患者が増加するであろう」との意見で一致を見た。

この予測の10年前の昭和56年、マザー・テレサは日本の第一印象を次のように語った。「私はインドの飢餓と病に苦しむ人たちの救済援助を求めて、世界各国を回って日本を訪れましたが、日本ほど物質的にも環境的にも、あらゆる面でこれほど恵まれた豊かな国はありませんでした。しかしその日本に住む人たちは、私が訪れたどの国の民族よりも、その表情に貧しさと暗さを感じました」と。

さらに、約1週間後の離日に際し「こんなに恵まれた豊かな日本人たちの表情が貧しく暗いのは、日本人が正しい信仰を持っていないからだ」と、厳しい指摘を残した。心の拠り所を持たず物ばかりを追い求める日本人の生き方に、信仰に生きる者として、悲しさと空しさを覚えたのだろう。

近未来学会の予測から四半世紀を経過した今日、予測は不幸にして現実のものとなった。人間形成の原点であり、社会の基本単位である家庭が崩壊の危機に瀕している。平成2年から統計を取り始めた児童虐待件数は増加の一途を辿り、四半世紀の間に約百倍の10万件に達したという。

平成22年1月にNHK特別番組「無縁社会―三万二千人の無縁死―」が放映され、社会に大きな衝撃が走った。1年後に発生した東日本大震災で絆が一時的に復活したものの、無縁死は着実に増加し、自治体はその対応に苦慮している。

人間関係の希薄化は人生の最後を飾る葬儀で具現化する。見送る人のほとんどいない直葬は実に悲しい。