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1、宗教と科学 「共感」という脳の仕組み

國學院大教授井上順孝

2016.08.26~2016.09.16

  • 1、宗教と科学 「共感」という脳の仕組み
  • 3、右脳の世界 自他分ける境界線がない
  • 2、意識の研究 神がかり体験どう理解?
  • 4、信仰 「特別な意識」根拠はどこ

ウェブサイトで視聴できるTEDトークという面白い番組がある。1984年に設立されたアメリカの非営利団体が運営していて、様々な新しいアイデアの紹介などがなされている。

脳神経科学や認知科学系の研究者も数多く登場するが、有名なキリスト教伝道師のビリー・グラハムに語らせたりもしている。

V・S・ラマチャンドランは脳神経科学の分野ではよく知られた研究者であるが、彼が2009年のTEDトークでミラーニューロンについて説明したとき次のようなことを主張した。

かつてC・P・スノーはサイエンス(自然科学)とヒューマニティズ(人文科学)は二つの文化であり、両者は決して交わらないとした。しかしミラーニューロンシステムは、意識や自己表現や何が人と人とを分かつか、何が他者と共感できるようにしているのか、そして人類独特の文化や文明の発祥といった問題を考え直す視点の基礎にある。

ラマチャンドランが言及したスノーの主張は1959年の講演を基にした『二つの文化と科学革命』という本に示されており、私も学生時代に読んだ。科学者はシェイクスピアを知らず、文学者は簡単な物理法則も知らない。そうした事態を批判したわけである。

自然科学、人文科学のいずれの分野においても、これは好ましくないと思う人は少なくないのだろうが、実際にはスノーの指摘は、現代の日本においても的外れとは言い難い。しかし、そうは言っておれないような事態になってきている。

ミラーニューロンというのは、96年にイタリアのG・リッツォラッティがマカクザルの脳神経細胞を調べているときに発見したことをきっかけに話題になった。人間もまた自分の行動や状態と他者の行動や状態に同じように反応する神経細胞があることに注目が集まった。

これは共感という人間の最も特徴的な営みの一つに関わってくると考えられるから、当然ながら、宗教儀礼や実践のなされ方、あるいは信仰共同体の存続の理由といったことにも関わる。二つの文化などと突き放した言い方では済まない時代に突入したのである。