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1、山の行より里の行 ネットワークを生かして

金峯山修験本宗総本山金峯山寺長臈田中利典

2016.05.13~2016.06.03

  • 1、山の行より里の行 ネットワークを生かして
  • 3、寺社フェス向源にて 日本人は無宗教ではない
  • 2、僧侶派遣業の是と非 激動の時代に新たな要求
  • 4、拝観講座を主催 世間にアクセス積極的に

昨年、齢60を無事迎え、長年勤めた金峯山寺の重役職を勇退し、京都府下綾部の自坊に帰山した。「40、50は洟垂れ小僧」が相場の僧侶の世界では、60歳での引退はかなり勿体ないかもしれない。

私は15歳で家を出て、天台宗と浄土真宗の学校で学び、26歳で吉野の金峯山寺に入寺した。その後、教学部長、宗務総長と役職を歴任し、また家庭をもうけて1女3男も授かった。その間、何度か帰郷しようとしたがその都度呼び返され、単身赴任も長く送った。

こういう生活がまだまだ続くかなと思っていたが、諸般の事情で昨年、終止符が打たれた。ようやく洟垂れ小僧から一人前の年齢を迎える矢先のことなので、自分自身でも心残りなところもあった。でも、70歳になって故郷に帰ったのでは何の役にも立たないし、新たなことなど何もできないと思いを致した。

お山の上にいてはできないことが里に下りればたくさんできる。もともと、私たち修験の世界では「山の行より里の行」という教えがあり、山で修行した力を里の生活で生かしてこそ、その修行に意味がある。

今年4月から地元綾部のFM局コミュニティーラジオで毎週、コメンテーターを務めることになり、「りてんさんの知人友人探訪」というコーナーも新設し、吉野生活で培ったネットワークからいろんな方に登場いただいている。第1回は高野山大学名誉教授の村上保壽さん。その後、空援隊専務理事の倉田宇山さん、聖護院の宮城泰年門主と続き、この後も東大寺の狹川普文新別当や九鬼家隆熊野本宮大社宮司、私の実弟・五條良知金峯山寺管領など、知己の宗教者に大いに語ってもらう予定である。

無仏の時代というか、末法というのか、現代社会は宗教離れが著しい。一方で、仏像ブームや、パワースポット・ご朱印帳ブームなど、宗教の周辺に関心を抱く世代も多い。

要は時代に沿った形で宗教者側がどう答えていくかが問われていると言ってよいのかもしれない。

私自身がそこのところで何ができるのか、絶好の機会を与えられたのだと思っているのである。