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苦縁―東日本大震災 寄り添う宗教者たち
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1、《あの日》から 「異常さ」再び受け止めて

日本同盟基督教団・徳丸町キリスト教会牧師朝岡勝

2016.03.11~2016.04.01

  • 1、《あの日》から 「異常さ」再び受け止めて
  • 3、死の看取り 希望を力強く指し示して
  • 2、原発停止に思う いのちの尊厳守るために
  • 4、平和をつくる者 世界の傾きの中に立つ

《あの日》から5年の月日がたちました。今日の日を深い悲しみの中に迎えているおひとりひとりのために、天来の慰めを心から祈ります。

復興庁発表によると、2月12日現在の東日本大震災による避難者数は17万4471人とのことです。しかし、これ以外にも原発事故後の放射能被ばくの影響を避けるための自主避難者などを加えると、20万人近い人々が、震災前の生活に戻れないままの状態に置かれているのです。福島在住の牧師が、被災地の現状を「複雑化と矮小化」と表現していました。

福島の県民健康調査によって子どもたちの甲状腺がんが多発化しているものの、これが原発事故に由来するものなのか、そして将来的に彼らに低線量被ばくの影響が出るのか。専門家の間でも議論が錯綜し、ますます「複雑化」しています。その一方で避難区域解除は進み、帰還が促進されて、日常的には原発事故の影響はもはや消えてしまったかのように「矮小化」されているのです。

これに加えて、被災地では「差異化と希釈化」が起きているようにも思えます。あちこちの仮設住宅では、自力で生活再建に向かう人々と、取り残される人々の「差異化」が進み、仮設住宅そのものの集約と統廃合で、人間関係もさらに寸断されています。また、福島県は来年3月末で自主避難者への借り上げ住宅提供を打ち切るとのことです。ここでも避難区域の線引きによる「差異化」が起きているのです。さらに、事態がどんどん長引かされていくことにより、被災地以外では震災の記憶がどんどん「希釈化」されて、「あたかも何事もなかったかのごとく」の様相を呈しています。

私たちはあらためて、《あの日》から5年を経ていまなお20万人近い人々が避難生活を余儀なくされていることの「異常さ」、あれだけの経験をしてなお原発再稼働が続くことの「異常さ」を受けとめ直すことが必要なのではないでしょうか。「いのち」が尊ばれること、この当たり前のことが回復されなければ、私たちの社会に未来はありません。