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1、ローマ教皇の成果 米国の歴史認識揺さぶる

外交政策センター顧問島村力

2015.11.27~2015.12.18

  • 1、ローマ教皇の成果 米国の歴史認識揺さぶる
  • 3、モルモン教徒 ホワイトハウスを目指す
  • 2、メガチャーチ 週末の礼拝は驚きの光景
  • 4、同性婚 教会内部の引き締め徹底

アメリカの歴史は移民の歴史である。長年、アメリカの文化はWASPと言われてきた。それは「白人(W)で西欧から来たアングロサクソン人(AS)、しかもプロテスタント教徒(P)」がアメリカの支配者であるという意味。人口の71%がキリスト教徒であるが、今もプロテスタントが多数派で、カトリックは少数派だ。

9月下旬、カトリック教徒が崇拝するローマ教皇フランシスコがアメリカを訪れ、24日、ローマ教皇として初めて連邦議会で演説をした。まさに歴史的事件である。このところカトリックの信者が減る傾向にある。カトリック教徒であるベイナー前下院議長の頼みに応じたようだが、信者減少の歯止めをかけられただろうか。演説の中で、しかも、自分は「新大陸の息子だ」と注目に値する発言があった。

フランシスコはアルゼンチン出身で、741年以降、初めてのヨーロッパ人以外の教皇である。貧しい人々に冷たい資本主義には批判的で、世界的な環境保護に熱心な宗教者だ。訪米中5度ほどスピーチをし、連邦議会では英語だったが、あとはスペイン語で行った。おりしも大統領選予備選の共和党候補の一人、ドナルド・トランプ氏が「アメリカでスペイン語を公に話すべきでない」と叫んでいる最中である。

このところ増えているメキシコや中米からの移民らは、スペイン語を話し、カトリックの信者だ。アメリカにおけるカトリックの中心が西部、南部に移ってきて、今やヒスパニックス(彼らをそう呼んでいる)が信者の3割を超えて、減少傾向に歯止めをかけているのが現状である。

首都ワシントンでのミサを教皇はスペイン語で行ったばかりか、スペイン統治の昔、カリフォルニアに最初の伝道の礎をつくったフニペロ・セラを聖人に加えると述べ、アメリカ「建国の父祖」と讃えた。これは従来のアメリカ人の歴史認識をゆさぶるものである。略奪と殺戮の悲劇にあった先住民の子孫は反対し、セラの列聖に反対する請願に1万人が署名している。

教皇訪米がどんな影響をもたらすか、興味深い。