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時間かけ寺社の魅力体感 一般の人に注目され始めた“寺泊”(4/4ページ)

2016年9月14日付 中外日報(深層ワイド)

非日常求める旅人が来る

JTB総合研究所主任研究員 河野まゆ子さん

河野まゆ子・JTB総合研究所主任研究員

一口に宿泊施設と言ってもビジネスホテルとリゾートホテルでは利用者の目的が異なるように、お寺に泊まる場合はお寺ならではの意義が求められる。

精進料理や閑静な庭、お勤めへの参列、坐禅体験、お坊さんと話したりすることは、それ自体が大きなエンターテインメント要素となる。設備やサービスが一般のホテルより劣っていたとしても、「お寺に泊まる感」があれば多くの人が集まるはずだ。

旅は非日常を味わいに行くものだとよくいわれる。お寺はもともと結界を張られた修行の場で、僧侶の人たちは普通の人と異なる服装をしている。お寺はすでに、旅に求められる非日常という舞台設定ができている。

もちろん日常とあまりにかけ離れていると敬遠されるのだが、近年はお坊さんがテレビに出ることも増え、お寺やお坊さんが身近に感じられるようになってきた。仏教好きなマニア層だけでなく、より多くの人が寺院に親しむようになる可能性は大きい。

お寺が檀家制度に守られた時代が過ぎつつある今、伝統ある寺院や宝物を未来に継承していくには、社会変化に対応したお寺の運営を考える必要がある。祈祷に力を入れたり、檀家の拡大を目指したり、お寺の成り立ちや地域性によって方法は様々だろうが、宿泊施設というのも選択肢の一つ。お寺に足を運んでもらうことは、お寺の価値を知るのに一番いい。

もちろん全てを住職一人でやろうとしても、できることには限りがある。広報、催しの企画、宿泊者への対応など、それぞれの専門家に力を借りるべきだ。人が泊まれば、周りのお店で買い物するなどして経済効果が広がる。かつてのようにお寺がコミュニティーの核となり、面として効果が生まれるよう、点と点を結ぶコーディネーター役もいるといい。

お寺には長い歴史があり、伽藍や所蔵する宝物、地域住民との関わり方もそれぞれに個性がある。そうした寺院の伝統を取り入れ、単なる宿泊施設ではない、「身近な非日常空間」が感じられる宿泊の場が増えることを期待する。(談)