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時間かけ寺社の魅力体感 一般の人に注目され始めた“寺泊”(2/4ページ)

2016年9月14日付 中外日報(深層ワイド)

日本の宗教文化を体感できる工夫を

寺院が好きな一般の人から新たな宿泊企画が生まれている。広報やツアー企画などの専門家が加われば、仏教との接点が広がる有効な手段となる。ただ不特定多数の人を受け入れるには、仏像盗難などに対する危機管理も求められる。

寺院活性化のモデルケースに

大阪の寺町隣接地に「宿坊」を建設

大阪・下寺町に計画されている「宿坊・和空」の完成予想図

たくさんの寺院が軒を連ねる大阪市天王寺区の下寺町。その一画で、社団法人による「宿坊・和空」の建築が進んでいる。寺院境内でないため厳密な意味での宿坊ではないが、寺の隣接地で宗教的な雰囲気を感じながら泊まれる施設として「宿坊」と冠した。

全国寺社観光協会や宿坊検索サイト「和空」などが、国内外へ寺社の魅力を伝える「宿坊創生プロジェクト」の一環で、来年3月のオープンを目指す。近くにある和宗総本山四天王寺などの協力で、朝勤参列、坐禅、写経、僧侶による寺町案内など、宗教文化体験を組み合わせた宿泊をアピールする。また食品関係会社と連携しての精進料理、旅行代理店との提携による集客など、宿坊に注目する一般企業にもネットワークを広げる。

「宿坊・和空」の隣接地にある西山浄土宗泰聖寺の純空壮宏副住職(39)は、「現地でしかできない体験は心に残り、リピーターになってくれる可能性が高い。この“宿坊”が、過疎化などで存続が危ぶまれている寺院の活性化のモデルケースになれば」と願う。体験内容の立案にも協力しており、「宿泊者の反応を見ながら寺院への関心が高まるプランを工夫していきたい」と意欲を見せる。

ただ新たな宿坊に楽観論ばかりではない。日蓮宗総本山身延山久遠寺(山梨県身延町)の山内で宿坊を運営する住職は、「約30ある山内支院で宿坊をしているのは20ほど。もともと本山参詣者のための宿泊施設だったのに現在やめているのには、それほど宿泊客が見込めなかったり、手間がかかったりといった理由がある」と語り、東京や京都など多くの人が訪れる観光地と地方では環境が異なることを心配する。

外国人倍増に期待するが 性善説を前提にしては危険

政府は東京五輪が開かれる2020年の外国人観光客数目標を2千万人から4千万人に倍増した。泊まれる寺院が増えれば宿泊施設不足を補うだけでなく、伝統文化が凝縮された空間で本物の日本を感じてもらえると期待が高まる一方で寺宝管理などの課題もある。

寺社の防犯に詳しいセキュリティハウス・センターの植村光代・総合防犯設備士は「性善説を前提にしていては危険」と指摘。宗教や文化の違う外国人旅行者が増え日本人でも価値観が多様になっている。深夜に宿泊客が騒いで、寺院の閑静なイメージを損ねる恐れもある。対策が甘いとネットに情報が流れれば、どこまで被害が拡大するか予測がつかない。

植村総合防犯設備士は具体的な対応として、立ち入り禁止場所を明確に宿泊者に提示する、防犯設備が設置されていることを示し抑止力とする、などを提案。「寺社であまり厳しい監視体制が敷かれているのもふさわしくないが、多くの人を受け入れる以上、犯罪を未然に防ぐ策を講じておく必要はある」と注意する。