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人々の心に教えは届いたか 仏教各派の「スローガン」は今(1/5ページ)

2016年6月15日付 中外日報(深層ワイド)

信仰運動の理念を端的に表現

伝統仏教各宗派は、それぞれの教えを端的に表現し、「いのちの尊さ」や「他人とのつながりの大切さ」を訴える「スローガン」の下、教化活動や宗門運動を展開している。多くの教団がスローガンを掲げ始めた1960年代から今に至るまで、そこには一貫して変わらない願いが流れているが、その願いが宗派内外に思うように浸透していない状況もある。(杲恵順・青山智耶)

真宗本廟(京都市下京区)の外堀に掲げられている看板を見ながら境内に進む修学旅行生の列

京都駅前の真宗大谷派真宗本廟(東本願寺・京都市下京区)には、毎年5月から6月にかけて約2千人の修学旅行生が訪れる。駅から続く地下道から同寺に面した「烏丸七条交差点」に出た生徒らの多くは、この言葉の前で足を止める。

「今、いのちがあなたを生きている」――。

同派が2011年の宗祖親鸞聖人750回御遠忌を機に掲げたスローガンだ。交差点前の同寺外堀にこのスローガンの巨大な看板が設置されている。その大きさもさることながら「いのちがあなたを生きている」の文言が目を引くようで、友人と「文法がおかしくない?」などと話しながら境内へと入っていく。

スローガンは宗派の「御遠忌専門委員会―御遠忌テーマに関する委員会」で、1年間の協議を経て05年に決定した。委員会でも「日本語としてどうか」との意見があったが、最終的には「テーマが様々な議論を呼び、新しい表現や運動が起こされていくこと」を願って定められた。

その背景には、当時の時代状況が大きく反映されている。日本の年間自殺者は3万人を超え、海外ではアメリカ同時多発テロに端を発するアフガニスタン戦争をはじめ、民族・宗教間の対立が後を絶たず、多くの尊い命が失われていた。委員会は、そこには「近代的人間観に基づいた“いのちの私有化”の問題がある」と捉えたのだ。

「いのちは誰のものか。決してわたしのものではない。その自己執着の闇を破る呼び声こそが念仏ではないか」。スローガンには「はかりしれないいのちを持つ無量寿仏である阿弥陀如来の呼び掛け」が表されている。

熊谷宗惠宗務総長(当時)は「浄土を根拠とするいのちを回復せんとされた親鸞聖人のお姿に出遇うことを通して、あなたを、そして私を貫くいのちの事実の深さと広さを確かめてほしい」とスローガンに込めた願いを語っている。

宗派には、看板を見た修学旅行生や観光客から「意味を教えてほしい」との問い合わせが多く寄せられているという。総務部広報は「その都度、テーマに込めた願いを丁寧に伝えているので、一般の人にも仏教の教えに触れてもらういい機会となっているのでは」と話す。