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それで信者は増えたの? 怪談説法で仏教を身近なものに(1/6ページ)

2016年2月17日付 中外日報(深層ワイド)

「お寺でアート」「カフェで坐禅」「お寺の漫画図書館」……。寺院や僧侶が自由な発想でユニークな活動を展開し、メディアから好意的に取り上げられる例が増えた。当事者は「一般の方々に仏教に親しんでほしい」と口をそろえ、新興教団に見られるような信者獲得活動ではないと強調する。とはいえ、「それで檀家や信者が増えたのか?」との疑問も。結果的に檀信徒が増えたケースには人々の喜びや苦に寄り添う真剣な姿勢が共通している。(池田圭)

ろうそくの明かりで演出した寺の本堂で「怪談説法」をする三木住職

「呪いをかけてもいいですか?」。あるテレビ番組に出演した京都市下京区・日蓮宗蓮久寺の三木大雲住職(43)がそう問い掛けると、男性タレントが「いやです~!」とのけ反った。

住職は「私は『いや』という人は嫌いだ」と畳み掛けた後、「そうやって私は『あなたのことが嫌い』という思いに縛られる。これが呪いの正体です」と語り、自らの思いが最後には自分に還ってくる因果を示した法華経の教え「還着於本人」を説明。「人を恨む気持ちは必ず本人に還ってくる」と説いた。

様々な“心霊現象”を体験したという三木住職は怪談を切り口に仏法を説く「怪談和尚」で知られ、テレビ・ラジオ出演や寺院での法話の依頼が夏場を中心に年間約40件ある。「怪談好きの人からは『怖くない』とよく言われるが、『ありがたかった』と思っていただけるように説教の内容を考えている」という。

原点の一つは布教の場を求めていた20代の頃に出会った暴走族。少年たちが素直に話を聞くわけはないので、まず「たばこ、ちょうだい」。さらに「ねえ、お坊さんの怖い話を聞きたくない?」と続けて得意の「怪談説法」に持ち込んだ。

「妖怪や幽霊は目に見えない存在だが、何か訴えたいことがあるから時々、我々の前に様々な形で現れて合図を送っている」と語り掛けると、ある少年が「お化けは僕だ」とつぶやいた。

「自分なりに頑張っても親や先生が褒めてくれないからいろいろと気を引こうとする。暴走は彼らの訴えなんです。そこにお化けと自分を重ねたのでしょう」。素行を正そうとけんかになったこともある。だが、そんな温かいまなざしで青少年教化にも励んできた。

法華経に人を仏法に導く「開示悟入」という言葉がある。「『たばこ、ちょうだい』はまず相手の土俵に立つ『開』。そして僧侶である私の姿を『示』す。『悟入』は私ではなく、その人次第だが、道は仏様がつくってくれる」と語り、「檀家を増やしたり、寺を大きくすることではなく、救われた人が増えることが大切なんです」と力を込めた。

2005年の住職就任以来、増えた檀家は十数軒、約500人と新たにつながりができた。

既存の檀家を含めて月参りは4軒ほどだが、全国から毎月約20人が祈祷や相談事などで寺を訪れる。怪談ファンには家庭環境が悪いなど孤独な人も多いという。「私にもこんな不思議なことがあった」との話を否定せず、「ひょっとしたらこういう意味があるのでは」と一緒に考えている。