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寺の資源をプロデュース

京都府長岡京市・西山浄土宗楊谷寺 日下俊英住職

2017年1月18日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

楊谷寺の歴史や自然を生かして、次々に企画を打ち出す日下住職
楊谷寺の歴史や自然を生かして、次々に企画を打ち出す日下住職

目の病に霊験があるとして、広く信仰を集めてきた柳谷観音を本尊とする西山浄土宗楊谷寺。1200年の歴史を誇る寺院として知られるが、数年前からこれまでにない企画が次々に行われている。日下俊英住職(47)は「新しく作るのではなく、古くからあるものの見せ方を変えること」と、自らの取り組みについて語る。

月替わりで美術品を披露する「寺宝展」では、所蔵している掛け軸などを1点ずつ公開。目を「癒やす」柳谷観音にちなんで、アロマケアで体や心の疲れを癒やすイベントなども開いている。

様々な活動を展開する日下住職は、眠っていた楊谷寺の資源を掘り起こし、形にしていくプロデューサーの役割を担う。

妻の恵さんのアイデアで始めた「押し花朱印」も境内の植物を生かした。同寺には約4500株ものアジサイがあり、初夏には鮮やかに色づく。

摘み取り、乾燥させたアジサイが貼り付けられた朱印紙は大きな反響を呼び、当初100枚だけ用意していたが、求める参拝者が殺到。最終的には約900枚も授与された。

2015年の住職就任の1年ほど前から、新しい活動に少しずつ挑戦してきた。背景には「時代が変わってきている。有効な布教活動ができていないのでは。このままでは、次の世代に寺を渡すことができなくなる」という危機感があった。

楊谷寺は観音菩薩を敬う人々が通う信者寺。檀家が代々支えていく寺と違い、個人があつい信仰を寄せるが、「一代限り」で関係が途切れることも少なくない。だからこそ「寺の名前を知らせ、浸透させなければならない」と強く思った。

最近ではメディアで取り上げられることも増え、「お参りに来る方が若返ってきている」と手応えが得られるようになった。

だが、イベントも押し花朱印も入り口にすぎないと感じている。本当の目的はこの地に足を運び、本尊に手を合わせてもらうことだ。

「『今月来たら何があるのかな』とワクワクして、お寺参りをしてほしい。ここで日常の嫌なことを全て捨て去ってもらって、すっきりして帰っていただければ」と日下住職は願う。

(丹治隆宏)