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山の信仰、文化を後世に

神戸市灘区・摩耶山天上寺 伊藤浄厳貫主

2016年11月9日付 中外日報(キラリ ― 頑張る寺社・宗教者)

俳句大会の受賞者を表彰する伊藤貫主(右端)
俳句大会の受賞者を表彰する伊藤貫主(右端)

瀬戸内海国立公園に属する神戸市・六甲山系の摩耶山は豊かな自然と景観に恵まれ、古来、多くの俳人が足を運んだ。山頂に伽藍を構える646年開創の古刹、摩耶山天上寺(灘区、真言系)には、与謝蕪村の「菜の花や月は東に日は西に」などの句碑が立ち並ぶ。

同寺近くの会場で10月24日、第25回摩耶山俳句大会が開かれ、関西を中心に関東や四国から157人が参加。俳誌『ホトトギス』名誉主宰の稲畑汀子氏や主催する摩耶山観光文化協会の会長、伊藤浄厳貫主(77)らが選者を務め、優秀作を表彰した。

「『俳句の山』だと知らない人が多い。山の魅力を発信しようと始めた。山上での大会が25回も続いたのは希有なことだ」と伊藤貫主は語る。大会は著名な選者と俳句愛好者との交流の場になっているという。

秋の摩耶山はイベントが多い。同寺は10月22日~11月6日、15回目の宝物展「文人画と長崎派の世界」を開き、蕪村や鶴亭、頼山陽らの書画が並んだ。今年は「渡りチョウ」のアサギマダラが多数、境内に飛来し、参拝者の目を楽しませた。

同寺は40年前に不慮の火災で伽藍を全焼。以来、入寺した伊藤貫主が復興に尽力し、金堂、摩耶夫人堂など主要な堂宇を再建した。現在、第3期事業で大師堂、護摩堂等の建立を計画中だ。

天上寺一帯は建築物の新改築など開発が厳しく規制され、「一つのお堂を建てるのに10~15年もかかる」。民間の参入も進まず「世界遺産などは大変なブームだが、国立公園だけが蚊帳の外だ」と伊藤貫主は嘆く。

摩耶山へ上るケーブルカー、ロープウエーは阪神・淡路大震災で打撃を受け、近年は多発する風水害でたびたび運休。運営母体の市もいったん廃止の方針を示したが、地元の要望で撤回された。

摩耶山では明治初期に日本初の長距離ロードレースがあり、優勝者の名を冠した第4回「シム記念・摩耶登山マラソン」が協会等の主催で12月に開かれる。寺と摩耶山の信仰、文化を後世に伝える伊藤貫主の“マラソン”は続く。

(飯川道弘)